若手の成長を感じた「第102回 野村狂言座」【能楽観賞日記】#52

第102回 野村狂言座
宝生能楽堂
2023年4月6日(木) 14:00開演

本日の解説は、幸雄さん。
幸雄さんの解説を聴くのは2回目(だったはず)
今回も正座スタイルで。

前回は「私が解説してる間は、出入り自由なので…」って言ってたけど、今日は「パンフの解説をまだ読んでない方は、私が話してる間に読んでください」と😂
幸雄さんの解説は、そういうスタイルなのね😌

今日のお座席は、脇正面3列目。
中正面寄りの端っこだったので、目付柱がちと邪魔でした。
でも見所の傾斜がしっかりついてるので、視界はとても良好でした。

観世能楽堂と宝生能楽堂は、他所と比べて、とても見易いと思うので好きです。

小舞

「貝尽し」 岡聡史
「八島 後」飯田豪

*・*・*

岡さんの舞は、とても丁寧で誠実さが表れてるようで、以前観た三番叟を思い出しました。一方、飯田さんの舞は題材が題材なだけに、とても雄々しく、力強くてカッコよかったです。

狂言「粟田口」

  大名:野村万作
太郎冠者:高野和憲
 すっぱ:野村萬斎
  後見:岡聡史

【あらすじ】京都の粟田口に住んだ刀工たちがつくった刀を「粟田口」いうのだが、大名(演:野村万作)も太郎冠者(演:高野和憲)も粟田口が何であるか知らない。そんな中、大名は、粟田口比べがあるのでそれを求めるため、太郎冠者を都に使いへ出すが、粟田口生まれだというすっぱ(詐欺師/演:野村萬斎)に騙され、本人を連れて帰ってくる。そして、大名が粟田口について書いた書物と照合すると、すっぱは自分の条件と粟田口の内容を巧みにあわせ、そのまま雇われることに。そして早速、大名がすっぱを連れて外出し「粟田口」「藤右馬允」と名を呼び、機敏な返事を喜んでいると・・・。

*・*・*

似たような演目に「末広がり」がありますが、今回は大名も一緒に騙されてしまうパターン。万作さん演じる大名が、超ピュアで可愛かったデス🤭💕

大名とすっぱのやり取りがドタバタで、アラ、萬斎さん大変だなァと思いながらも(笑)、萬斎さんのアクロバティックな動きが好きなので、楽しませて頂きました😌

ただ、以前観た「秀句傘」でもそうだったんだけど、大名の無知が招いた結果であるとはいえ、最後に持ち逃げされてしまう姿は、万作さんがやると本当に切なくて、ちょっと同情してしまいます😅

教訓:無知だから騙される。肝に銘じよう。

狂言「吹取」

 男:内藤連
何某:深田博治
 女:中村修一
後見:飯田豪

【あらすじ】清水の観世音から、月夜に五条の橋で笛を吹くと妻が得られるとお告げを受けた男(演:内藤連)が、自分は笛が吹けないので、知人(演:深田博治)に代わりに吹いて貰うことにする。知人が笛を吹くとお告げ通り、笛の音に惹かれて女(演:中村修一)が現れるのだが…。

*・*・*

先日ラジオでチラッと言ってたけど、深田さんが、たまには笛を吹く方をやりたいとのことで、珍しい配役に。そこでまず、妻を欲しがる男役にイケメンの内藤さんをぶつけて来たのが面白い🤭

以前観た配役(深田さんが男役で、萬斎さんが笛吹き)だと、出てきた女が萬斎さん演ずる笛吹きに執着するのは、こんな色男が居たら、そっちに行きたくなるよな(爆)🤣…って思って観てたンだけど、今回はイケメンの内藤さんを素通りして、笛吹きの方に行ってしまうのは、あ、そうだよね、笛吹いてた本人はそっちだもんね、と素直に?観ることが出来ました😂

男と笛吹きで醜女を押し付け合うのだが、イケメンであろうがなかろうが、男に相応しい妻として現れたのが醜女だったのは、女性に対する男の心が清らかではないからか🤔

それとも、似たようなオチである狂言「賽の目」の解説で、以前、東次郎先生が仰ってた「夫婦というものは、何年か一緒に暮らしてると嫌な部分が見えてくる」というメッセージが込められてるのか🤔

ラストの男と醜女とのやり取りは、普段から相方を務めることが多い中村さんだったので、息ピッタリ!これはこれで楽しませて頂きました🤣
ただ、今回使用した面は、あまり醜女感がありませんでしたねぇ。なので、感想漁ってるとイマイチ、ピンときていないお客さんも居たようです。

因みに、深田さんの笛の出来栄えは…音が掠れたままで、あ!笛ってやっぱり難しいンだなって思いました😂(萬斎さんの時は、ちゃんと音は出てた。そう、音は…ねw)
でも、その掠れ具合が、逆に深田さんのちょっとおとぼけ感のあるキャラに合ってて良かったと思います🤣👍✨

ということで、笛の音を聴いてるときの内藤さんの表情が、なんとも言えない表情だったのは気のせいか?🤔
その後、満面の笑みで「良い音が聴けました」と言った時は、嘘つけ!完全にお世辞じゃん!🤣
…と思ってしまいました🤣👍✨
狂言方が自ら笛を吹くという珍しい演目ですが、この辺のアンバランスさも含めての笑いなのかもしれませんw

この後は休憩を挟んで、素囃子「盤渉楽」へ。「吹取」の後に本職の笛を聴くのは、演者にとって幸か不幸か?いや、本職の人の後に演るほうがやり辛いか?w

竹市学さんの笛がキレッキレでロックだった👍✨
やはりホンモノは違う(当たり前だ)
 

狂言「越後聟」

   聟:野村裕基
   舅:石田幸雄
太郎冠者:月崎晴夫
  匂当:野村太一郎

後見:深田博治・中村修一
地謡:岡聡史・高野和憲・野村萬斎・内藤連・飯田豪

【あらすじ】越後の聟(演:野村裕基)が酒肴を手みやげに能登の舅(演:石田幸雄)を訪ねるというので、姉聟の勾当(演:野村太一郎)もやってきて一緒に待つことに。聟入りの盃事のあと、姉聟の勾当が舞い、平家を語る。そして舅から越後の獅子舞を所望された聟は、獅子の扮装をして、獅子舞を披露する。

*・*・*

獅子舞の部分は映像で観たことがありますが、本狂言としてフルで演じるのは超久しぶりということで、それを生で拝見できたのは、とてもありがたい🙏

お笑い要素よりも、互いの芸を見せ合う、芸づくしの演目でした。太一郎さんの舞や平家語り、そして裕基くんの謡や獅子舞を観ていて、若手がメキメキと力を付けてきてるなと感じ、一門の将来が益々楽しみになりました。

長身の裕基くんが獅子舞をやると、能舞台がとても狭く感じるほどに、とても迫力があり、パパが後ろで厳しい目つき(めちゃめちゃ謡い方がロックだったw)で見つめる中、とても立派にやりきったと思います。とてもフレッシュでカッコ良かったッ!👍✨

最近益々、芸が萬斎さんに似てきたな、と思う反面、その中には裕基くんらしさも見え隠れしてて、決してクリソツではないと感じます。萬斎さんの芸の良い部分をいっぱい吸収して、消化して、しっかり自分のモノにして、これからも成長していって欲しいなァと思います。

完成された芸を観るのも楽しいけど、若手が成長していく姿を見守るのも楽しい、と先日のハムレットを観て気付いた今日この頃です😌

遅咲きのファン故、萬斎さんの進化の過程を見届けられなかった分、弟子である裕基くんや太一郎さんたちの「これから」は、ずっと見守っていきたいな、と思っております。

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

▼前回の野村狂言座の感想はコチラ

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