超絶親子コンビの隠狸【能楽観賞日記】#16

第30回 櫻詠会
観世能楽堂
2022年8月21日(日) 13:00開演

金春流の【第30回 櫻詠会】を観に観世能楽堂に行って来ました。
演目は、人間国宝の野村万作さんと萬斎さん父子の“超絶コンビ”(って以前、萬斎さんが自分でラジオで言ってたんだよ笑)による狂言『隠狸』と、お能は『卒都婆小町』『山姥』の二本立て!全て初見の演目で、金春流のお能を観るのも今回が初めてでした。

本日もお気に入りの脇正面席(しかも2列目!)からの鑑賞でしたが、超絶コンビ(特に推し)のお顔が良く見える位置で、まさにベスポジでした👍
素晴らしいお席を用意して頂き、ありがとうございました🙏
てか、観世能楽堂は座席が千鳥配置だから観やすくて良き。好き😌

脇正面席だと、演者が正面から見て横並びになった時、奥側の人が見えなくなるというデメリットがありますが、それ以外は特に気にならないし、何より橋掛りと演者との距離感が近くて一番好きかな。演目によっては正面席の方が良い場合もありますが、脇正面席は舞台を横から観るという、他の劇場では味わえないロマンある座席だと思います。まぁ、私的に一番バランス良いなと思うのは斜め(中正面)から観ることなんですが、柱がネックなのよね💦

※狂言の後見が飯田さんになってますが、実際に出て来たのは岡さんでした🤔?
※あと仕舞の演目にも変更がありました

能「卒都婆小町」

 小野小町(シテ):山中一馬
高野山の僧(ワキ):森常好
 従僧(ワキツレ):舘田善博

【あらすじ】四番目物。五流現行曲。劇的な波瀾に満ちた狂女物で、老女物として重く扱われる。高野山の僧(ワキ、ワキツレ)が、津国安倍野に着く。そこへ百歳に及び乞食の境涯に落ちぶれた小野小町(シテ)が登場。人目を恥じつつ都を出てきたが、苦しいからと朽ち木に腰をおろす。僧は、それが仏体を刻んだ卒都婆であることに気づき、ほかで休むように説得するが、小町は逆に居直り、仏教論争のすえに僧を言い負かしてしまう。

*・*・*

老女物を観るのは今回が初めて。「卒都婆小町」は上演時間が105分もある重厚な演目で、演じる方も難しい曲らしいのですが、観る方もサラッと予習した程度じゃ受け止めきれない、今まで見た中でも難しい曲だな、と感じました。

でもシテの山中一馬師が、この老女となった小野小町を演じるにあたって、面や装束選びなど事前準備を少しずつ進めてきた様子をご本人のTwitterにて、ちょいちょい拝見しており、その甲斐あってか、実際の舞台でも役に挑む覚悟がしっかり反映されており、この老女から只者ではない感を凄く感じられたので、とても良かったと思います。

この髪色の拘りも脇正面席だったので、しっかり観ることができたのですが、山中師ならではの小野小町になっており大変良かったと思います。

後半は、若き日の小野小町が課した『百夜通い』を行い、惜しくもその最後の夜に死んでしまった深草少将の怨霊がシテに取り憑いて突如狂乱状態になります。それまでゆったりとした動きだったシテが少将の姿になり、その苦難と死のありさまを再現。しっかりと舞を舞う場面があるので、お能としての見応えも充分。途中、烏帽子が面の上に滑り落ちてしまうアクシデントがありましたが、舞いながら自然な仕草でサッと直して、場を乱すこともなく冷静に対処されていたのも良かったです。

今回は終始シテの山中師がとても素晴らしかったので、現在能も良いなァと感じることができました。今回は初見だったので、この演目の内容や世界観を理解するので精一杯でしたが、次観る機会があったら、今度はこの曲そのものの重厚さをしっかりと受け止めることができそうです。

狂言「隠狸」

太郎冠者(シテ):野村万作
   主(アド):野村萬斎

【あらすじ】太郎冠者が狸を捕るという噂を聞いた主人は真偽を確かめるため、太郎冠者に、狸汁を作って客を呼ぶから狸を捕ってこいと命じる。しかし、太郎冠者は狸を捕ったことなどないとすっとぼける。そこで主人は、ならば狸汁にする狸を市場で買ってこいと命じる。
実は太郎冠者は、狸釣りの名人で昨晩も大狸を捕っており、その大狸を主人に差し出したくないので市場に売りに行くことにする。しかし、市場に先回りしていた主人に見つかってしまい…。狸を隠したい太郎冠者と、真実を解っていながら泳がす主人との攻防が楽しい、和泉流にのみ伝わる専有曲。

*・*・*

以前から評判が良くて観てみたかった念願の『隠狸』。

万作&萬斎親子の『隠狸』は最高でした❗
流石、超絶コンビ‼️👍✨

太郎冠者が持ってきた小道具の狸の縫いぐるみは、客席が微笑に包まれる程可愛かったし(隣の人が思わず「可愛い💕」と発してしまうほど☺️)、その狸を巡っての二人の攻防が面白おかしくて、終始笑いっぱなしでした🤣

二人のやりとりが良く見える位置だったので、狸が見つからないように気にする仕草や表情をする万作さんの太郎冠者はとても可愛いかったし、逆に萬斎さん演じるご主人様は、解っていながら泳がすあたりが楽しそうで、ちょっとSッ気を感じたカモ🤣
以前やった時は、シテとアドが逆だったようですが、この組み合わせも良きでした👍✨

あと万作さんと萬斎さんが揃って舞を舞った時は、凄い贅沢なものを観た気分になりました😳✨
(その間も二人の攻防は続いてるんだけど🤣)
萬斎さんの謡が素晴らしくて、耳が幸せでした///

万作さんは少し前に一時的に体調を崩されていたようでして、すぐに復帰はされましたが、私が復帰後のお姿を拝見するのは今回が初めてだったので、お元気な姿をようやく見れて安心しました。何より、この二人の『隠狸』が観たかったので、無事に観れて良かった‼️

という事で、今後も万作さんには素敵な芸を見せて欲しいです😌
超絶コンビもまだまだ観たい‼️👍✨

能「山姥」

里女後ニ山姥(シテ):政木哲司
  百魔山姥(ツレ):澤翼
    従者(ワキ):村瀬提
  従者(ワキツレ):村瀬慧
  従者(ワキツレ):矢野昌平
   所の者(アイ):内藤連

【あらすじ】五番目物。五流現行曲。妖怪・山姥の山巡りの曲舞を得意とする遊女・百魔山姥(ツレ)は、供の男たち(ワキ、ワキツレ)と善光寺詣での途中、上路の山中でにわかに日の暮れる不思議に出会う。宿を貸そうと現れた山の女(前シテ)は、百魔山姥に山姥の謡を所望し、実は自分が真の山姥だと告げ、夕月のころに再会を約して消える(中入)。
道案内の里人(アイ)は、従者の問いに答え、さまざまな山姥に関する珍説を語る。やがて真の山姥(後シテ)は恐ろしげな姿で登場し、深山幽谷のさまを描写し、正邪一如、善悪不二の哲理を説き、山姥の曲舞を舞い、山巡りのありさまをみせつつ消えうせる。

*・*・*

Wikiによると山姥は“奥山に棲む老女の怪。日本の妖怪で、山に住み、人を食らうと考えられている”とある通り、一般的には恐ろしい妖怪のイメージが強い。実際に私もゲーム『仁王2』に出てくる山姥のイメージが強くてだな💦

仁王2 公式サイト【山姥】
https://www.gamecity.ne.jp/nioh2/youkai/youkai-06.html

でもこのお能は、誰も見たことがない妖怪・山姥のモノマネで名声を得た遊女がホンモノの山姥に出会い、山姥は遊女に仏法の深遠な哲理を説いて去って行くというお話。鬼女と恐れられてるけど、実は自然と共に生き、陰ながら良いことをしてるようで、シテを務めた政木哲司師の解説によると鬼女・妖怪というよりは妖精に近い存在なんじゃないかということでした。ファンタジーというか、メルヘンチックなお話で、山姥の印象が大分変わりましたね。

こちらも上演時間が100分もある重厚な演目で、事前に解説を聞いておかないと、なかなか難しい曲ですが、後半は謡も変化に富んで、シテも舞っているうちに興に乗っていく感じがあり、こちらも見ごたえのある演目でした。

この日は長丁場でしたが重厚な2曲を体験し、またひとつお能の深みに触れられたんじゃないかなァと思います。

狂言で笑ってストレスを発散し、お能の凛とした世界に触れて雑念をリセットする。
能楽の会の面白さを改めて感じた1日でした。

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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