第26回 称名寺薪能【能楽観賞日記】#55

第26回 称名寺薪能

称名寺境内特設能舞台
2023年5月3日(水・祝) 17:00開演

毎年恒例の『称名寺薪能』。ここ数年はコロナ禍ということもあり、去年はホール公演だったので、行こうか迷いつつ行かなかったんだけど(苦笑)、今年は久しぶりに称名寺で行われるということで、初参加してきました。演目は、野村萬斎さんの狂言「蝸牛」と、櫻間右陣さんのお能「清経」でした。

仁王門
帰りはライトアップされてました
中に入ると浄土庭園があります
こちらも帰りはライトアップされてました
御朱印も頂いて参りました

称名寺は小さなお寺ですが、特設能舞台は緑に囲まれた場所にあり、自然の香り溢れる場所で幽玄の世界を楽しんで来ました。シロツメクサが生えてる土の上に客席があるので、ホントに草の匂いが凄かった。ちょっと先は住宅街だけど、ここだけは緑の山に囲まれてるので、森の中に居るような気分でした。

風で揺れる木々の音、鳥の鳴き声、寺の鐘の音と共に観る能楽は、先日観た夜桜能とはまた一味違う風情がありました(癖になりそう)。春や真夏の薪能と違って、気温が丁度良いのも良かったです。

今日は各演目のシテ本人による解説あり。右陣先生は、能舞台の真ん中に立って解説してるのに対し、萬斎さんは、いつもの調子で動き回り、ユーモアと得意の横文字を交えながら楽しく解説して下さいました(ほっこり)。

解説のあとは地元の子供達による連吟「六浦」
みんな想い想いの浴衣を着ており可愛かった(親御さんたちが張り切って用意してそう)

その次は、金沢八景教室受講者のご婦人たちによる連吟「放下僧」

そして、火入れ式、金春流の伊藤眞也師・北山春彦師による仕舞「小袖曽我」と、右陣先生の一調「葛城」へと続きます。あ、ちなみに今回は珍しく休憩は一切ナシです。

狂言「蝸牛」

太郎冠者:野村萬斎
   主:深田博治
  山伏:飯田豪
  後見:中村修一

*・*・*

あらすじは、以前、観たことがある演目なので割愛。

今回も萬斎さんの太郎冠者がとっても可愛いかったです。萬斎さんはもちろん、飯田さんもしっかり客席から笑いを誘って、息の合った二人のやり取りが見ててとても楽しかった〜!👍✨

飯田さん、山伏が似合ってたなァ~。彼は貫禄ある役が似合いますね。

この『蝸牛』ですが、前回観たときは、おめでたい会だったからか、大蔵流と同じ終わり方(平和的)だったんだけど、今回は本来の和泉流の終わり方で、やっと観れた!って感じでした🤭

あと解説の時、「コロナ前は囃子に乗る所で皆さんにも謡って貰ってたんだけど、今日は皆さんにお任せします」と言ったので、控え目ながらも手拍子が起きました。今後はこういうのが増えてくると良いですね😌

能「清経」

平清経の亡霊:櫻間右陣
  清経の妻:阪本昂平
 清経の家臣:森常好改メ宝生常三

 笛:松田弘之
小鼓:大倉源次郎
大鼓:亀井広忠

【あらすじ】平清経の家臣(ワキ)が清経の遺髪を携え、都に居る清経の妻(ツレ)を訪ねる。家臣が清経の入水を伝えると、妻は嘆き悲しみにくれる。そして遺髪を見ても、悲しみが増すばかりであるからと、九州の宇佐八幡宮に返納してしまう。その夜、妻の夢の中に、清経の亡霊(シテ)が現れる。妻は清経が自分を残して入水したことを咎め、清経は妻が遺髪を送り返したことを非難し、お互いに恨みを言って涙する。清経は合戦の様子や、運命を悟って入水した有様を語り、修羅道(生前に戦をした人が落ちる戦いの世界)の苦しみを聞かせるが、最後は跡の弔いを頼んで成仏していく。

*・*・*

解説によると、とても仲の良い夫婦だったそうで、当時は一緒に死ぬことで、また一緒に生まれ変われるという考えがあり、にも関わらず、妻を置いて先に逝ってしまった故に夫を咎めてしまうという、悲しく切ない話ではあるけど、その中心には夫婦愛が感じられる、そんな演目。

今回は、右陣先生の清経としての存在感がお見事でした。修羅能は好きなジャンルなので(笑)、食い入るように観てしまいました。中正面からの鑑賞だったので、かがり火の向こうに見えるシテが凄く幽玄で、橋掛りに居るときも空に浮かんだ月の位置が良い感じで、何もかもが良い絵になっていました。

ということで、この日は眠くなりませんでした(笑)

狂言は心を豊かにし、お能は心のデトックスになると改めて感じた夜でした。

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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