矢来能楽堂はライブハウスのような距離感でした!【能楽観賞日記】#8

観世九皐会 6月定例会【第2部】
矢来能楽堂
2022年6月12日(日) 15:30開演

237席の小さな能楽堂、矢来能楽堂へ初めて行ってきました。
昭和27年に再建されたということで、年季の入った能舞台でした。

そして、何よりも・・・

最前列と能舞台が近いッ!近すぎるッ!!😳✨

普通の能楽堂だと、最前列と能舞台の間は1〜2mくらい離れてると思うんですけど、こちらの能舞台はホントに目の前にありまして、音楽の世界で例えたらライブハウスのような感覚!!

ということで、本日は正面席の最前列のお席を確保してたので(しかも買ったのコロナ真っ只中の1月)、ライブハウスの距離感で萬斎さんを観てしまいました!😻💕(ヒャー

ちなみに、萬斎沼にドボンしてから半年経ちましたが、生で萬斎さんを拝見したのが、ハムレットのリーディング公演を含めると、今回で記念すべき10回目でございました。

GLAYのファンになった時(←ちなみに24年前ね)、初めてGLAYのライブに行けたのが、その2年後(しかも自力でチケ取れず、友達が誘ってくれた)だったことを考えると、半年で10回も生で萬斎さんを観てるの我ながら凄いと思うし、それだけ萬斎さんが公演をこなしてるってことなんだよね💦音楽のライブだったら精々、ツアーは年1回だもん(一応履歴を見たら、年に6回もGLAYライブに参戦できた年もありましたがw)。

いやぁ、ホント、沼だわ。萬斎沼でもあるし、能楽沼でもある。見れば見るほど、能楽の面白さに気づいてハマっていく。首都圏住みだから出来るってこともあるけど、人間、美しいものや面白いものを観ると心が豊かになりますから、こんなに頻繁に供給されたら、そう簡単には抜け出せない(多分)。

狂言「入間川」

東国の大名(野村萬斎)太郎冠者(高野和憲)を連れて都から本国へ帰る途中、武蔵野で大河に行き当たります。川の名前も渡り方も分からないので、向こう岸に現れた男(石田幸雄)に偉そうに問うと、向こうも偉そうに返事をしてきたので、ついカッとしてしまう大名(笑)。ここは他国で、相手は大名のことは知らないのだからと、なだめる太郎冠者。ここは太郎冠者のアドバイスで、大名が言葉を変えて再度尋ねると、相手も態度を改めて答えてくれました。

男は「この川は入間川で、昔は浅瀬だったが今は深いから渡れない。渡り瀬はもっと上流にある」と答えますが、大名は入間川という名前から、この地に伝わる入間様の逆言葉(※)を使ったものと勘違いして、太郎冠者が止めるのも聞かず渡ってしまい、見事深みにハマってしまいます(この時、アーッ!って言いながらクルクル回る萬斎さんが可愛かったんだ・笑)。

※【入間様の逆言葉】
「入間様」とは、言葉の反対の意味の言葉を言ったり、言葉の順序を逆に言ったり、言葉の順序を逆に言ったりする言葉遊びの一種。室町時代の旅行書『廻国雑記』にも書かれており、当時、都の人々の間で話題になっていたのかもしれません。(定例会解説書より)

怒った大名は男を討とうと刀に手をかけますが、機転をきかせた男が逆言葉を使って応答(こういう利口な役が石田さんには良く似合ってますね)。殺されかけてるのに「有難い」と答える男を見て、大名がこれは一本取られたといわんばかりに命を助けます。そして、逆言葉のやりとりを面白がった大名は、もっと逆言葉が聞きたいと言って、刀や扇までも男に与えてしまい、「嬉しくございません」の答えが返ってくる度に大笑い(この大名様、とっても楽しそうw)。

楽しくなってきた大名は太郎冠者にもやってみろと勧めますが、残念ながら太郎冠者は男に与えられるものを何も持っていません。そこで大名は、ついに自分が身につけていた着物まで与えてしまいます(やりすぎw てかソレ濡れてるのでは?w)。自分が持っていた持ち物全てを男に与えてしまった大名ですが、果たしてここからどうするのか・・・?

なんと大名は言葉巧みに誘導し、男の口から「物を貰えて嬉しい」と言わせ、そこに逆言葉の理屈を無理やりこじつけて男をだまし、与えた品物を取り返して逃げていくのでした(了)

*・*・*

この日、萬斎さんが中に着ていた着物が、先週の『武悪』で万作さんが着ていた着物と同じっぽかったから思い出したんだけど、『武悪』も言葉巧みに誘導されて、主人が持ち物を全部、幽霊に扮した武悪にあげちゃってましたけど(笑)、この大名の場合は自分の意思とはいえ、持ち物を全部、入間の何某にあげちゃってどうするんだろうと思ったら、ちゃっかり奪い返してましたよ、えぇ(笑)。狂言に出てくる大名は、どこか子供っぽくてチャーミングなんですが、萬斎さんが演じるとより一層、大名のチャーミングな部分が際立ちますね。会場のウケも良かったですし、楽しく鑑賞させていただきました。

能「善界」

今回は間狂言の演者が当初の予定から変更になりました。
淡朗さんが別の公演に出ていたため、高野さんが代打となりました。

淡朗さんのアイが聴けなくて残念なキモチもあれば、連続で高野さんが観れてウレシイというキモチもあり、なんだかフクザツな心境でしたが、淡朗さんのアイは調べたら次回行く公演の方で見れそうです。ってことで、それまでお預け。

能「善界」のあらすじですが、カンタンに説明すると、中国全土を制圧したつもり(つもりってw)の天狗の首領・善界坊が、勢力拡大をもくろみ日本にやってくるのですが、比叡山の僧正(最高位の僧侶)たちの祈りによって降臨した不動明王と明王十二天の神々によって返り討ちに遭ってしまうというお話。翼も折れ、力も尽き果てた善界坊は「もう日本には二度と来たくない!」と言い残して去っていきます(苦笑

日本の僧正と神様マジ強ぇぇ。

『FF7』で言ったらナイツオブラウンド(※)を召喚したようなものか。

※【ナイツオブラウンド】
たった2回召喚するだけでラスボスを撃沈させる、FF歴代屈指のバランスブレイカーとして知られる召喚獣。FF7にて登場。元ネタは「アーサー王と円卓の騎士」。

同じくゲームネタで言えば『Ghost of Tsushima』の元ネタでもある、鎌倉時代にモンゴル帝国軍に侵攻を受けた対馬も、天候が味方してくれたお陰で難を乗り越えた(諸説ありますが)という話もちょっと思い出しました。

逆に、今、常識の通用しない相手に攻め込まれたら、一体誰が、この国を守ってくれるのだろう?🤔とも、ちと思ったり。。。

シテの善界坊ですが、前シテでは山伏の姿(直面)で現れます。これは慢心した山伏が妖怪化したものが天狗と呼ばれていたからだそう。調子に乗る=天狗になるの語源は、ここから来ていたのですね。勉強になりました。

あと、最前列そのものは初めてじゃないけど、この距離感でお能を観たのは初めてだったので、天狗の力強い舞(だけど負けちゃうw)と装束や貴重な羽団扇を間近で観れたのは凄い良かったです👍✨

今回は矢来能楽堂にて、定例会の演目のあらすじと見どころをカジュアルに説明している「鑑賞のてびき」のお陰で、とても分かりやすく楽しく鑑賞することができました。てか、善界坊さん、ヒドイ言われようww

このパンフ、能楽初心者にはとてもおすすめです。公式HPでもご覧になれますので、お能に興味のある方は、毎月チェックしてみると良いかもしれません。

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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