能楽初心者にオススメの公演シリーズ【能楽観賞日記】#9

能を知る会 東京公演「屋島」
国立能楽堂
2022年6月19日(日) 14:00 開演

鎌倉能舞台の【能を知る会】を観に、国立能楽堂へ行ってきました。

能楽鑑賞デビュー以来の【能を知る会】となります。このシリーズは事前解説のほかに、お能の演目には字幕解説も付きますから、能楽鑑賞初心者にはオススメの公演シリーズです。

終演後は観世流能楽師シテ方の中森貫太先生による質疑応答もあるので勉強にもなります。今回も、お能にはエンディングがないものが多く、その場合の結末はご想像にお任せであるとか、能舞台の寸法は決まってるのに、演者の平均身長が伸びてきたせいか、最近は舞台が狭く感じるとか(萬斎さんの息子も、貫太先生の息子も大きいもんね。日本人の進化を感じるわァ)、いろんなお話を聞くことができました。

チケットは鎌倉能舞台のサイトから申し込めるほか、イープラスでも販売していますので、気になる方はチェックしてみてくださいね。

今回は正面席の3列目の上手端っこから鑑賞。地謡側は完全に隠れてしまいますが、この角度から観る橋掛りがとても新鮮でした。能楽堂の座席は、位置によってメリットとデメリットが全く変わってくるので面白い。個人的には、ちょっとお安い脇正面が、演者の足の運びが分かりやすく、また演者との距離が近いためお気に入りだったりしますけど、正面席の端っこの席も公演によってはランクが下がって少しお安くなってたりするので、演目にも寄りますが、これはこれでアリだなと思いました。

狂言「柑子」

主人(内藤連)から頂き物のみつなりの柑子(みかんの一種)を預かっていた太郎冠者(野村萬斎)。ある時、その事を思い出した主人から柑子を持ってくるよう仰せつかった太郎冠者はほとほと困ってしまう。すでに全て食べてしまっていた太郎冠者は、柑子が無くなってしまった言い訳をあれやこれとし始める・・・。能「俊寛」の主人公、俊寛僧都の島流しの話の語りも見所のひとつ。

*・*・*

柑子(みかん)という事で、萬斎さんは橙色の着物に黄緑の袴で🍊カラーな太郎冠者でした。品のあるお色だったのでちょっと可愛く感じました。柑子を全て食べてしまった太郎冠者の言い訳がメインのお話なので、萬斎さんの話術が光る光る。私のマスクの下の口角は終始上がりっぱなしでした(笑

仕舞「頼政」

貫太先生は仕舞「頼政」でご登場。こちらもご丁寧に字幕付き(助かる!)。

能「頼政」の後半部分、在りし日の姿で現れた頼政の霊(後シテ)が、敗戦の様子や扇の芝で自害を遂げた無念を語るシーンを再現。先月、喜多流自主公演で観たばかりの演目だったので、今回は字幕効果もあり、復習してるみたいで場面に対する理解がより深まりました✨

そして、自分はお能の中でもカッコイイ舞が観れる修羅物が好きだと確信しました😁
当然この演目も好きなので、いつか観世流でも観てみたいですね。

能「屋島」

漁翁/源義経(シテ):中森健之介
漁夫(ツレ):奥川恒成
旅僧(ワキ):殿田謙吉
従僧(ワキツレ):大日方寛、御厨誠吾
屋島ノ浦人(アイ):石田淡朗

西国行脚の途中、讃岐国屋島の浦に立ち寄った都の僧(ワキ)は、とある塩屋に宿を求めた。丁度釣りから戻ってきた主の漁翁(前シテ)は、取次の若い漁夫(ツレ)から僧が都の人だと聞き、宿を貸す事にする。僧に求められるまま、屋島の戦いにおける源氏の大将九郎判官義経の名将ぶり、平家方の悪七兵衛景清の錣【しころ】引き、能登守教経に討ち取られた義経の家臣佐藤継信の最期、などを次々と語って聞かせる。あまりにも詳しい話を怪しみ、僧が名を尋ねると漁翁は義経の霊だとほのめかして姿を消す。(中入)僧が夢うつつに待っていると、源義経の霊(後シテ)が甲冑姿で現れる。義経は屋島の戦いの際、波に流された自身の弓を敵に取らせまいと、果敢にも取りに行った様を仕方話に見せる。そして現在も修羅道において、未だに能登守教経と争っている様を示す。やがて夜明けとなり、義経は消え失せるのであった。

*・*・*

本日は公演の最初に、古典芸能解説者である葛西聖司アナウンサーによる解説があり、この人の著書も先日読みましたが、とても能楽愛に溢れてました。本日の「屋島」は、そういった方の解説と字幕のお陰で、終始気軽に楽しむことが出来たので大満足です😆

スラリとした健之介さんの源義経はとてもカッコ良かったデス!声も聴き取りやすくて、結構好きかもしれない。

にしても、どんなに歴史に名を残した武将でも、人を殺した罪で地獄に堕ちてしまったという設定にいろいろ考えさせられました。結局、戦争ってどんなに大義名分を振りかざそうが人殺しは人殺しなんですよね。

そして、前回聴くことが叶わなかった石田淡朗さんの間狂言、今回バッチリ聴くことができました。いつもニコニコしながら太郎冠者を演じる時とは180度変わって、真剣な間語りも素晴らしかったです✨

ところで最近知ったんですけど、淡朗さんも凄い経歴の持ち主なんですね。どうりで若いのに存在感もあるし上手いわけだわァと納得。

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

▼前回の【能を知る会】感想はコチラ

▼【喜多流5月自主公演】の感想はコチラ

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