蚊の精と生霊のお話【能楽観賞日記】#10

桑田貴志 能まつり「葵上」
観世能楽堂
2022年6月26日(日) 14:30 開演

6月ラストは【桑田貴志 能まつり】を観るため観世能楽堂へ行ってきました。

太一郎さんの白雪姫以来の観世能楽堂でしたが、今回も脇正面席で鑑賞したので、見え方は前回とほぼ一緒。観世能楽堂は座席が千鳥配置になってて観やすいし、座席スペースも広めなので結構快適です。

狂言「蚊相撲」

新たな家臣を召抱えようと思い立った大名(野村萬斎)は、たった一人の家臣である太郎冠者(内藤連)を遣いに出す。太郎冠者は街道で道行く男(石田淡朗)に声を掛け、連れて帰ったのだが、実はその男は人間社会に紛れ込み、人の血を狙っている蚊の精であった。

家来の嗜みとして、その男は相撲が得意と伝えると、大名はその腕前を確かめようと大名自ら相手となり勝負に挑むのだが、、、

*・*・*

にほんごであそぼver.はサイトで観れるので知ってたのですが、今回、生でフルで初めて鑑賞。私の記憶が正しければ前半のくだりとオチは4月の夜桜能で観た「文相撲」と全く一緒なんだけど、相手が蚊の精なだけに独特な雰囲気のある一曲になっており、これはこれでとても面白かったです。観に行って良かった!

にしても、蚊の精ねぇ…昔の人は面白いことを思いつきますねぇ。
これが擬人化の原点なのかも❓🤔

ちょっぴり大人気ない大名様と萬斎さんのチャーミングな狂言ボイスは相性が良く、今回も可愛らしい萬斎さんが拝めました☺️(うちわ投げ捨てる時、地謡座の柵に思い切り当たってたけど大丈夫なんだろうか?「文相撲」同様、子供染みた大名様が可愛くて、めっちゃ笑ったわw)

ところで大名役の萬斎さんの演目を観るのは今回で「文相撲」「入間川」「蚊相撲」と、3回目だけど、3曲共、着物を脱ぐシーンがあったのは偶々だろうか?(笑)

ちなみに淡朗さんの蚊の精は、風に煽られてふんわりと綺麗に舞う姿と、調子に乗る大名への力強い逆襲っぷりのギャップが良かったです(笑)。そして、ラスト理不尽な目に遭う内藤太郎冠者の反応も良くて、ホントに思わず声出して笑っちゃいました😆

印象に残る、とても良い配役でした👍

能「葵上」

六条御息所(シテ):桑田貴志
照日巫女(ツレ) :中森健之介
横川小聖(ワキ) :福王和幸
大臣(ワキツレ) :村瀬堤
大臣の下人(アイ):飯田豪

源氏物語の「葵の巻」を題材とした演目。光源氏の正妻となった葵上と、光源氏の愛を失った六条御息所との確執を描いています。シテは、葵上に激しい嫉妬の心をぶつける六条御息所の生霊演目のタイトルにもなっている葵上は、生霊に祟られ寝込んでいる設定なので出てきません。舞台正面手前に置かれた一枚の小袖が、病床に伏せる葵上を表現しています(寝てるだけなのでわざわざ役者を用意する必要がないということか)。

今回、六条御息所が葵上への嫉妬に悩む直接の原因となったのは、賀茂の祭の車争いでの屈辱によるもの。なのでただの女の嫉妬、というよりは、貴人としてのプライドからくる嫉妬といったところでしょうか。

六条御息所は美しく教養のある女性なので、ただ嫉妬に狂うのではなく、気品さも表現しなければならない難しい役なのですが、その六条御息所の生霊が、葵上を責め立て扇を投げ捨てるシーンでは、脇正面からの鑑賞だったんだけど、寝ている葵上に向かって垂直に、かつ力強く綺麗に扇を落とすから観ててゾクッとしました。葵上に対する憎悪が静かに沸騰していくような、そんな印象でした。

*・*・*

人気の演目なので、耳が慣れて睡魔(←てか、これはまさに地謡によるラリホーorスリプルです)に勝てるようになってきたこのタイミングで鑑賞できてよかったかも(オイw

ただ今回は上演時間50分という、お能にしては短めの演目なので、ちょっと物足りなさを感じたり…。てか、そんな感情を抱く位、この3ヶ月でお能が好きになったのかと自分でも驚きだったり(笑)

今回は、公演冒頭の林望先生による源氏物語の解説と、パンフに載ってた舞台進行の解説のお陰でしっかり堪能出来ました。特に舞台進行についてはイメージしやすくなるので初心者にはありがたい。能楽師の皆さん、お能を楽しんでもらうために色々工夫されてるのだなぁと感じました。

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

▼4月【夜桜能】の感想はコチラ

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