雨の「夜桜能」と「第98回 野村狂言座」【能楽観賞日記】#3

先月に能楽鑑賞デビューをしてから、今月も能楽鑑賞をしてきたので、その感想を。

▼先月分の記事はこちらから▼

2022年4月4日(月)
第29回 奉納 靖國神社 夜桜能<第1夜>

令和4年4月4日という4並びの日。本来なら、野外の「靖國神社能楽堂」で行われる筈だったのですが、この日は生憎の雨(しかも寒い)。雨天会場である「新宿文化センター」になってしまいました。

久しぶりの野外イベントってことで数日前から、遠足前の小学生のように天気を気にしてたんだけどダメだった(苦笑)。てか、GLAYが晴れ男なせいで、今まで天気なんか気にしたことなかった。嵐を呼ぶことで有名なB’zの野外ライブでさえも私が行った日はかろうじて曇りで乗り越えた(翌日は大雨だったw)。ワタクシ、なんか天気の神様に嫌われるようなことしちゃったんですかね?(ショボーン

夜桜の下でお能が観れるなんて、絶対素敵やん!と思って、たまたま空いてた脇正面の2列目の席を取ったのに…。この日は、新宿文化センターの丸で囲んだ座席位置(画像参照)で観ることになりました。座席の段差がしっかり付いたホールだったし、能舞台もステージの中央に設置されてたので、舞台そのものは能楽堂の後方のお席のような距離感で観易かったです。

今回は、ホール能になってしまったので、火入れ式はカット。舞囃子・狂言・能のみの上演となりました。

狂言「文相撲」は、新しく雇った男の得意芸が相撲と聞いた大名が、自ら相手になって勝負を挑むのですが、奇妙な技(あれは猫騙し?w)を食らって負けてしまう。そこで大名は相撲の書を読んで勉強し、再び勝負を挑むのですが……というお話。

雨天でショボーンとしてた気持ちだったのですが、負けず嫌いな大名を萬斎さんがとてもチャーミングに演じていたので、とても面白い演目で(会場も笑いが起きてました)晴れやかなキモチになり、靖國神社に行けなかったことは残念だけど、それでもここに観に来て良かったと思いました。萬斎さん特有の笑いを誘う声の抑揚は、こういう役柄にとても合ってるような気がしました。

ちなみに、翌日は萬斎さんのお誕生日だったので、この日が55歳見納めの舞台となりました。できれば翌日も観に行きたかった(仕事さえなければ…!

能「羽衣」は一番人気の演目ということで、予習して楽しみにしていましたが、まだまだ初心者故、やっぱり謡がよく分からん(爆

ただ最近、お能についていろいろ勉強してるけど、頭で内容を理解しようとしてるから眠くなるのであって、心で感じないとダメなんだろうな、と。🤔ゲームでも、ストーリーはよく分からんけど雰囲気が好きだから、ついついプレイしてしまうって作品があるので(私の場合はそれがフロムゲーだったりするw)、そういう境地に持っていければ、もっと素直に楽しめる気がする。🤔能面や能装束を観るのは好きなので、次回お能を観る時は攻める方向を変えてみようと思います。

*・*・*

2022年4月14日(木)
第98回 野村狂言座

万作の会主催公演の『野村狂言座』を観に、宝生能楽堂へ行ってきました。最寄駅が水道橋駅ということで、この辺りは久しぶりに来た気がする。2015年のGLAY東京ドーム公演以来じゃないか?駅前の景色が懐かしかったわ。

ちなみに、この日も雨が……ッ!

私ホントに雨女になっちゃったんじゃないか?💦
春の天気ってホント崩れやすいのね…と思った今日この頃。

この日は、脇正面の「は列」の端っこの席。橋掛りが直ぐそばにあり、舞台からも近い位置ということで神席✨でした。解説に出てきた萬斎さんが、最初に客席をグルッと見渡したんだけど、こっちの方を見た時にあまりのオーラに思わず一瞬、目を晒しちゃった💦(苦笑)。それくらい近かったのです。

ちなみに観に行く前は、演目を後ろ側から観ることになるのかな?と思ったけど、狂言は正方形の舞台をフルに使って役者が動くので、そこまで気になることもなく、場合によっては正面席よりも役者を近くに感じることができるので、ますます脇正面席の虜になりました(笑)。

狂言「六人僧」の解説では、萬斎さんの年代的に「西遊記」を思い出すということで、“ガンダーラ”とか“夏目雅子”というワードまで飛び出してましたけど(笑)。私はリアタイ世代じゃないけど、昔は懐かしのドラマ・アニメ特集をよくテレビでやってたので知ってるって感じです(最近は、この手の番組を見なくなった気がしますが…)。西遊記はいろんな役者さんが演じてきたけど、1978年版は配役が最強だと思う。うん。

あと白い着物は“何もない”を意味するという例えで「羽衣」の話が出てきて、先日観たやつだ!と思って聞いていたのですが、シテ方が最初に白い着物で出てくるのは「…ヌードってことなんですよ」と、ちょっと嬉しそうに仰られてたのが忘れられません(笑)

狂言「梟山伏」

山から戻ってきた弟の様子がおかしく、どうやら物の怪に取り憑かれたようだ。ということで、兄は山伏にお願いして、弟を治してもらおうとするのですが……というお話。感染をテーマにしており、今の時代とリンクするようなお話ですが、そこは喜劇らしく、物の怪に取り憑かれた弟の奇声🦉が笑いを誘います。

しかし、この物の怪…というか、この梟の呪い🦉は、感染力絶大の難病(萬斎さん曰く、小学生の前でやると必ず感染するということで、それは何となく分かるw)。この話の行く末を見届けたあとに感じるのは、面白かったというよりは、世にも奇妙な物語を見た後のようなキモチに。そして、ポケモンのホーホーを見るたびに、この狂言を思い出してしまうという…(笑

狂言「引括」

日ごろから妻の態度や振舞いを疎ましく感じていた夫は、暫らくの間里帰りをしてはと妻に提案するのですが、夫の本心を察した妻は、暇の印となる物を夫に求めます。そこで、夫は布袋を渡して「この中に好きな物を入れて持って行け」というのですが、妻が袋に詰めたものは何と……!?

めちゃくちゃ短いけどインパクトのある狂言でした。太一郎さん演じる妻、強し。笑顔で橋掛りを通って帰って行く姿が忘れられません(笑)。この旦那さん、一生、この妻には頭が上がらないだろうなと思った(爆

狂言「花盗人」

桜の枝を盗み折ろうとして捕らえられ、桜の幹に縛りつけられた男が、歌を詠んで、その風雅のゆえに庭の主人から許されるお話。

万作さんがインタビューで最近好きになった演目に上げていたので、それは是非見てみたいと思って、今回チケを取ったんですよね。後見が裕基くんだったので、何気に親子三代での狂言でしたが、庭の主人役の萬斎さんが真剣な表情で裕基くんから、盗人・万作さんを捕らえるための縄を受け取っていたのが忘れられない(笑

そして、桜の木に縛られてしまった万作さんが、己の罪を後悔し独白するシーンでは、萬斎さんがずっと橋掛りにおり、私のすぐそばに萬斎さんがずっと居るもんだから、ずっとドキドキしっぱなしでした💦

演目の内容もハッピーエンドで、ほっこりしました。今の世の中ひとつ間違えたら一生許されないような厳しさを感じるけど、こちらは悪いことをしても人柄で全て許してしまう優しい世界が広がっており、花盗人や先月の八句連歌のような演目を万作・萬斎親子で観れて嬉しく思いました。

あと脇正面席からの鑑賞だったので、シテが桜の木に縛られてる時、万作さんのバックに桜があるような見え方だったので、縛られてるんだけど構図的には良い感じでした。演者が「このあたりの者でござる」と言う立ち位置=座席位置だったので真横から観る萬斎さんも美しかったです✨

狂言「六人僧」

ある男が、二人の仲間とともに諸国仏詣の旅に出て「今後は何があっても腹を立てない」という誓いを違いに立てる。その後、辻堂で休憩中、男が一人だけ熟睡してるのを良いことに、仲間の二人は男の髪を剃るという(度が過ぎた)悪戯をしてしまう。男が目を覚ますと激怒するが、「何があっても腹を立てない」という近いを盾にされたので、男は仲間二人と別れて帰路につく。腹の虫が治まらない男は、仕返しするために、仲間二人の妻の元へ行き、二人は旅の途中で川で溺れ死に、その最期の様子を伝えるために、自分は出家姿となって戻ってきたのだと語り……。

タイトルにある通り、最終的には夫も妻も皆坊主になってしまうという、長丁場の演目。シテが深田さん、悪戯っ子二人組に高野さんと月崎さんという配役がとても合ってる気がしました。てか、高野さんと月崎さんの息のあった狸寝入りが素晴らしい(笑

前回も感じたけど、高野さんだけ声量が飛び抜けてて、聞いてて気持ちの良い声をしてるなァと思いました。他の皆様も個性があり素晴らしく、万作の会の皆様のことが、ますます好きになりました。野村狂言座は平日公演なので、仕事との兼ね合いもありますが、今後も参加できる時は参加したいなァと思います。

*・*・*

キッカケは俳優としての萬斎さんだったけど、気付けばすっかり狂言師としての萬斎さんにハマってて、さらに演出家としての側面もあるから、追いかけてるとホントに色んな世界を魅せてくれるから、最近は萬斎沼って底なし沼だったんだなァと感じてます(笑)。夏には、能 狂言『鬼滅の刃』も控えてるし、今後の活躍も楽しみです。

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