野村萬斎主催公演「狂言ござる乃座65th」【能楽観賞日記】#2

昨日は野村萬斎さんが主催する「狂言ござる乃座65th」を観に、国立能楽堂へ行ってきました。

狂言ござる乃座 65th
国立能楽堂
2022年3月27日(日) 14:00開演
A席 脇正面 6列

小舞「七つ子(ななつご)」
深田博治

小舞「暁(あかつき)」
高野和憲

狂言「棒縛(ぼうしばり)」
野村裕基・石田幸雄・石田淡朗

狂言「八句連歌(はちくれんが)」
野村万作・野村萬斎

素囃子「早笛・舞働(はやふえ・まいばたらき)」
一噌幸弘・田邊恭資・原岡一之・桜井均

狂言「田植(たうえ)」
野村萬斎・野村太一郎・内藤連・中村修一・飯田豪・野村裕基

狂言を観るのは今回で2度目ですが、国立能楽堂に行くのは今回が初めて。先日行った横浜能楽堂は明るくて綺麗な感じでしたが、国立能楽堂は客席の照明が少し暗めで、かなり落ち着いた雰囲気の場所。これはこれでイイ感じでした。

今回は脇正面席(真横)からの鑑賞でしたが、舞台の奥行きが丸わかりなので役者の舞台上での立体的な動きがより堪能でき、これはこれで楽しめるお席でした。実際に行くまでは、真横から舞台を観るってどうなの?って思ってたけど、実際に観てみて、狂言師たちの立ち位置や動きもどこから観ても楽しめるようになっていて、改めて舞台を三方向から観るという能楽堂の独特な作りに対して、昔の人たちはなかなか面白いものを作ったなァと思いました。

シテ(主役)は橋掛りの近くに立ってることが多いから、正面より脇正面の方が距離感は近いかも。ただ今回は自分の座席が中正面寄りの端っこだったため、柱が邪魔をして棒縛の笑いどころのシーンが一部見えず残念でした(裕基くんのお顔をちゃんと観たかった!)。ま、座席の値段が安いってこういうことなんだなと。でもトータル的には6列目だったということもあり、良席でした。

今回は萬斎さんのユニークな解説付き(急遽特別に付けてくれたようです)だったので、より狂言を楽しむことができました。今回の演目は、私のようにドラマで萬斎沼にドボンした(笑)狂言初心者を意識して、分かりやすい演目の構成にしてくれたようで、その辺の解説や用語集などは入場時にもらえるパンフレットに全部書いてあるのですが、それを萬斎さん自ら改めて説明してくれるっていうね。パンフレット片手に説明してくれる萬斎さんは、なんだか学校の先生みたいでした(こんな先生居たら勉強頑張っちゃうよ、私・笑

冒頭に狂言「棒縛」の酒宴の場面で舞われる小舞「七つ子」「暁」を単独で入れたのは、「棒縛」で実際に縛られた状態で舞った時の舞と見比べるためのものだと聞いて、そこまで考えての構成なのかと、流石だなァと思いました。後半の素囃子からそのまま狂言「田植」に入る流れも良かったですしね。

その小舞ですが、高野さんの舞が声に迫力があって印象的でした。聴いてて気持ちよかったです。深田さんの舞が優雅なのに対して、高野さんの舞は直接的でどちらかというと型っぽい感じでした。(語彙力が無いので上手く言えない・爆)

狂言「棒縛」

留守にすると召使いたちが酒を盗み飲みすると知った主人は、太郎冠者と次郎冠者を縛り付けてから出かけて行くのですが…。

萬斎さんや万作さんの棒縛は動画やドキュメントでチラッと見たことあるけど、今回シテを勤めるのは息子の裕基くん。裕基くんの棒縛は若さ故かフレッシュに感じられて、ここからまた回数を重ねて磨き上げて行くのかなァと。来年の「能を知る会」でも裕基くんの棒縛が既に組み込まれてるので、今後は裕基くんの棒縛が観れる機会が増えそうですね。今後の活躍も楽しみです。あと、この話はなんだかんだで次郎冠者が一番ちゃっかりしてるような気がします(笑

狂言「八句連歌」

連歌の友人から借金している男が、連歌によそえてその返済の延期を願うお話。

人間国宝である万作さんの八句連歌は、連歌のきっかけとなる花を見つけた時の表情が圧巻で、万作さんの目の前に、能楽堂の舞台上に、実際には存在しない桜が私にも見えました。能楽堂に来るまでの間に、綺麗に咲いた桜の木々を見て来たせいもあるかと思いますが、その情景を一瞬で思い出させてくれる演技は圧巻で流石だと思いました。

そして相手役の萬斎さんの存在感も負けてない。やっぱり萬斎さんには華があるんだなァと再確認。そして、俳優や演出家など様々なことにチャレンジしてるお方だけど、やはり土台である狂言師っていう部分がしっかり根付いてるんだなァと。近い将来、万作さんのような名人の域に…と思うと萬斎さんの狂言師としての今後も目が離せません。

ちなみに狂言は現代劇や歌舞伎と違い大道具がなく、必要最低限の小道具しか使わないため(殆どがエアー◯◯な状態)、楽しめるかどうかは観客の想像力に委ねられるわけですが、ファミコン世代からのゲーマーな私としては、そういう想像をすることは得意だったりします(笑)。パッケージの絵とドット絵では同じキャラでも全然違うため、子供の頃はよくイメージイラストから世界観を膨らませながらゲームをプレイしていたものです。もちろん想像力を豊かにするには、それなりに経験値が必要ですが、狂言は身近なヒト・モノを題材にしているため誰でも想像しやすく、そこが古典でありながらも時代が移り変わっても楽しめる演劇になっているのではないかと思います。

狂言「田植」

賀茂明神の神主が五穀豊穣を祈って田植の神事をはじめようと氏子の早乙女たちを呼び出し田植を命じる。神主と女たちは、機知と諧謔に富んだ田植歌を応酬し、神主は朳(エブリ)を持って舞う。

萬斎さん曰く「田植えの神事を舞踊化した、いわばミュージカル」ということで、ストーリーはなく舞や謡がメインの演目です。前回観た「名取川」の萬斎さんの小舞が美しくて感動したので、今回の「田植」でもご本人が得意とする“ダンシング”が観れて満足でした。ちょっと早乙女たちに囲まれてデレデレした神主さんでしたけど(笑)。前回の僧も今回の神主もなかなか人間的でチャーミングだったので、どんなに立派な職の人でも、良くも悪くも人間なんだなと感じました(笑)。最近は皆、他人に聖人君子像を求めがちなので余計にね、そう感じたのかもしれない。

同じ五穀豊穣への祈りをあらわす神聖な舞として「三番叟」がありますが、それに対して、こちらはカジュアルな雰囲気で観れる五穀豊穣の舞。この日がとても春の陽気に恵まれた日でもあったせいか、晴れた気持ちになる、今の時期にピッタリな演目でした。

*・*・*

そんなこんなで今回も古典芸能に触れて有意義な休日を過ごすことができました。ここ最近、残業続きだったので、良い心の栄養補給になりました。また都合が合うときは積極的に観に行きたいと思います。

てか、休憩時間に5月のチケット売ってたから買っちゃったわよw(ちなみに4月分は確保済み)

「今なら正面の最前列空いてますよ」とスタッフさんに言われて、お安い脇・中正面と比べて、ちょっと悩みながらも、こんな機会なかなか無いよな?と思って、正面の最前列を買っちゃいました。財布が一気に軽くなりました(苦笑

こちらは延期になった1月分の振替公演なので、払い戻しが多かったのか、元々空いてたのか分かりませんけど、席はまだ結構残ってましたね…。まぁ、あのGLAYですらsold outしない御時世だもの、ドンマイ!としか言いようがない。

ちなみに一般発売は来月だったと思うので、興味ある方は是非。
てか、その前に「狂言ござる乃座65th」も、3月31日(木)の公演が残ってますので是非!
4月の「第98回 野村狂言座」もチケット発売中なので是非是非!

生で観る狂言はホントに面白いですよ。昔の言葉でも意外と聴き取れるし、笑えるし。何より狂言師たちの声量が凄くてね、能楽堂に響き渡る生の声は凄く迫力があるんです。これを経験してしまうと、音楽のライブと同様に動画じゃ満足できないです。

あと最近の国内外の出来事を見てると、いつ何が起きるか分からないから、観たい時に観ておけ!って感じがします。あと単純に、私的に木・金は休み取りづらいんだけど、4月と5月は、たまたま休めそうだったり、休みだったりしたのでチケ確保しました。これ逃すと、次いつ「野村狂言座」が観れるか分からないからね。

ということで、能楽堂巡りも兼ねた狂言鑑賞は今後も続く予定デス。

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