主人と家臣と~曽我の世界~【能楽観賞日記】#31

能を知る会 横浜公演「禪師曽我」
横浜能楽堂
2022年11月22日(火) 14:00 開演

鎌倉能舞台の「能を知る会」を観に横浜能楽堂へ。
年内の「能を知る会」はこれで最後かな。

カンタ先生の字幕は、謡や台詞の意味だけでなく、登場から、お囃子の意味、拍手のタイミングなど細かい部分まで行き届いてるから好きなんですよね。来年もできる限り観に行きたいところです。

今回の演目は萬斎さんの狂言「大藤内」と、中森貫太先生の能「禅師曽我」でした。
どちらも短い曲だけど面白かった‼️レア物だから観れて良かったです。

狂言「大藤内」

 大藤内:野村萬斎
狩場の者:野村太一郎
  後見:内藤連

【あらすじ】工藤祐経の客人として宴席に出席していた、大藤内(演:野村萬斎)。曽我兄弟の夜討ちから、命からがら這々の体で助けを求めて逃げてくる。そこへ通りがかった男(演:野村太一郎)は、臆病者の大藤内を見て・・・。

*・*・*

狂言「大藤内」は元々、能「夜討曽我」の間狂言として演じられるものなので、単独で観られる機会を作ってくれたカンタ先生と萬斎さんに感謝です😌

これを間狂言で観たら、良い息抜きになって面白いだろうなと思いました🤭

大藤内の悲鳴から始まる特殊な始まり方で、ちょっと鎌腹を思い出したんだけど、こういう狂言って他にもあるのかな?🤔

曽我兄弟の討ち入りに怯える大藤内を演じる萬斎さんと、慌てて逃げてきた大藤内をイキイキとからかう狩場の者を演じた太一郎さんのコンビ、息ぴったりで安定感があって良かったです🤭

萬斎さんの臆病な演技が、表情も含めどれも絶妙でした〜!😌フフフ

今回の萬斎さん、怯えて転げたり、寝転んだり、尻餅ついたりと、結構身体張った演技が求められるコミカルな演目だったけど😂そんな時でも萬斎さんの手つきや指先が美しくて、ちょっと見惚れてしまった🤭

所作が美しい所が好きだなと改めて😌

能「禪師曽我」

  國上禅師(シテ):中森貫太
    母(前ツレ):中所宜夫
  團三郎(前ツレ):永島充
   鬼王(前ツレ):奥川恒成
 伊東祐宗(後ツレ):鈴木啓吾
疋田小三郎(後ツレ):小島英明
   立衆(後ツレ):桑田貴志・石井寛人

【あらすじ】曽我兄弟は、源頼朝主催の富士での巻き狩りの際、父の仇敵である工藤祐経を討ち果たすも、兄・十郎祐成は討ち死にし、弟・五郎時致は捕らえられて処された。兄弟の郎等、團三郎と鬼王(前ツレ)は結末を見届けた後、討ち入り前に預かっていた兄弟の形見の品を兄弟の母(前ツレ)に届けるため、曽我の里へと赴く。兄弟の母は届けられた形見の品を目の前にし、主従共々兄弟の死を深く悲しむ。郎等のふたりから討ち入りの仔細を伝えられた母は、なぜ生き延びられなかったのかと涙にむせぶ。そして、新潟は國上の寺の末息子(シテ)の身の上を案じて郎等ふたりに手紙を託し、國上へと使いにやる(中入)。

一方、國上寺では禪師(シテ)が百座の護摩を焚いて供養をしていた。そこへ、養父の伊東祐宗(後ツレ)が頼朝の命を受けて禪師を捕らえにやって来る。禪師は尋常に戦い討ち死にし、養父の手柄となろうと考え、鎧・長刀にて身を固めて討って出る。ある程度の抵抗を見せるため、疋田小三郎(後ツレ)を切って捨てるが、他の郎等共(後ツレ)に押され、ついには護摩壇に上がって自害し果てようとする。しかし最後には生け捕りにされ、鎌倉へと送致されるのであった。

*・*・*

40分程の短い演目。だけど中身は濃厚です。

珍しく前半は前ツレのみで展開し、シテは出てきません。
曽我兄弟の死を悲しむ母の姿がとても切なかったです😢

ちなみに地謡に、以前、小袖曽我でシテとツレを演じた2人(観世喜正さんと中森健之介さん)が居たので、そのシーンの深みが増してました。

曽我兄弟には、もう一人弟が居ました。
それがシテの國上禅師です。

後半ではシテと後ツレのバトルがあり、カンタ先生の長刀捌きもカッコ良くて見応えありました。てか、長刀の型はそんなにパターンが無いらしいけど、長刀そのものがカッコいいので出てくるだけでワクワクしちゃう(笑)

クライマックスの戦闘シーンでシテが後ツレを退けた時、後ツレが足を揃えてピョンピョンピョンと後ろに飛んだので、萬斎さんの鞍馬天狗を思い出してしまって、あぁ、あの動きも型から来てるんだなと思いました😌

鎌倉公演の「小袖曽我」→今回の「大藤内」→「禅師曽我」と観てきたので、殆ど知らなかった曽我兄弟について理解が深まりました。シリーズもので観ていくのも、なかなか面白いです。とても良い企画でした😌

*・*・*

最後はお馴染み、カンタ先生による質疑応答。
覚えてる範囲で箇条書き。

・最近では現在能ばかりで、直面の役が多いが、直面の方が緊張する。

・女物=面を着ける演目が人気でよく上演されてるので、能=面のイメージが付いてるのではないか。

・「禅師曽我」は過去に国立能楽堂で他の方が上演してたので、その時の資料と師匠から貰った台本を見比べて完成させて行った。戦闘シーンは自由にやってよいとの事だったが、基本的に型が決まってるので、どの型を当てはめていくか、という部分を考えてる。

・前ツレ2人が登場し謳うところは、台本では本舞台上になっていたが、既に母親が待機してる場所でやるのは、初心者のお客さんには伝わりづらいと思い、橋掛かりでの演技に変更した。

・・・などなど。

上演前には、毎度おなじみ葛西聖司さんの大河や歌舞伎も絡めたお話も聞けて、今回も良き公演でした。

以前、萬斎さんも言ってたけど、葛西さんも横浜能楽堂が特に好きだそうで、確かに風情があって良い能舞台ですよね。でもね、ちょっと舞台が低いので、見所の後ろの方は見辛いんですよね(苦笑)。能舞台は素晴らしいけど、行きの坂道と見所は優しくない、気がする(苦笑)

▼前回の能を知る会の感想はコチラ

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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