第23回 よこはま「万作・萬斎の会」【能楽観賞日記】#59

第23回 よこはま「万作・萬斎の会」
横浜能楽堂
2023年5月13日(土) 14:00開演

昨年は仕事で行けなかったけど、今年は休みが取れたので、よこはま「万作・萬斎の会」に初参加。狂言は二曲とも初見の演目。狂言芸話では、六世万蔵さんの“能面師”としてのエピソードや、その現物も見せてくれたりと、とても貴重な会でした。

●解説 石田幸雄

内容としては、解説はパンフに書いてあるので、そこに書いていないことを中心に。狂言初めて観る方〜と聞いたら2〜3人くらい?で、殆どがリピーター(流石、主催公演と言ったところか)。いつもご贔屓にありがとうございます、と。「『子盗人』は、いつもの狂言と違う始まり方で、まず乳母が出てきます。終わり方も、乳母が赤子を連れて、舞台が元に戻る形で終了します。狂言に(根っからの)悪人は出てきません」と、普通の演目とは、ちょっと演出が違うよ、的な説明も。

●狂言芸話(23)野村万作

今回の狂言「孫聟」では面を使うので、父・六世万蔵さんと面の話を。

・当時、野村家は面を作ることで生計を立てていた。
そのお陰で美術関連の知り合いが沢山居る。

・根付や帯留も作っていた。
万作さんが、父が作った根付が欲しいと言ったら、他の兄弟も欲しがり、全員分作ってくれたとのこと。

・狂言面より能面の方が価値がある。
万蔵さんが作り他人に渡った能面が、持ち主が故人となったことにより、遺族より万作さんの手元に戻ってきた。それを今回披露してくれた。「能面の事は分からないが、親父が作ったものにしてはキレイだと感じた」とのことだったが、ホントに色合いに時の流れを感じるものの、表情はとても澄んだ雰囲気のあるきれいな能面だった。

・六世万蔵の入れ歯事件
大曲「花子」で、六世万蔵師が、あっ!と驚いた場面で入れ歯が飛んでしまったが、当時、後見をしていた万作さんは近眼で何が飛んだのか分からず、万蔵師が去り際に落ちた入れ歯を万作さんに向かって足で蹴飛ばしてきたという事件(!?)w
これは万作さんの著書「太郎冠者を生きる」にも書かれてるので、興味ある方は探してみてください(笑

ちなみに、狂言芸話で万作さんが出てきた時、マイクを忘れてしまい、深田さんが追いかけるように持って出てきたのが微笑ましかったんだけど、後半はマイクを使わずに話しており、しかもちゃんと見所に通るお声で、もしかして最初からマイク要らんかった?と思った😂

流石、現役の人間国宝である😳

狂言「子盗人」

博奕打:野村萬斎
 乳母:飯田豪
 何某:野村太一郎
 後見:深田博治

*・*・*

無一文になった博奕打が資産家の家に盗みに入ったところ、そこに寝ていた赤子にメロメロになってしまう話😂

ほぼ博奕打の一人芝居で、萬斎さんの芸が光っていた✨

犬が掘った穴から侵入する動作とか、人の気配を感じて橋掛りまで逃げていく機敏さとか、赤子にメロメロになっちゃう姿とか、いろんな萬斎さんが観れて面白かった😂

萬斎さんも3人の父親なので、お子さん達が幼かった時は子煩悩だったのかなァとか、ちょっと想像してしまった🤭
特に娘さん達のことは可愛がってたみたいだし😁

あと某映画でもお馴染み「レロレロレロヤ、ヒョロロン、ヒョロロン」が出てきて驚いた。ここが元ネタだってのかと😳

あと鎌倉の時に、また髪が伸びてきたな〜と思ってたら、この日は超スッキリしてたので、金曜日にカットしてきたのかしら?🤔まさか鎌倉から帰ってきて、その足で…は無いよね😅

シテ萬斎さんとアド飯田さんの組み合わせ、最近ホントに観る機会が多い。この日は飯田さんが桜色のお着物で、赤子を大事に思ってる気持ちが伝わってくるような、ちゃんと母性を感じる乳母で、演目の良き始まりと終わりになっていた😌

狂言「孫聟」

  祖父:野村万作
   舅:石田幸雄
太郎冠者:深田博治
   聟:野村裕基
  後見:飯田豪

*・*・*

聟入の日に仕切りたがりの祖父が出しゃばり、周りが振り回される話😂

いつの時代にも、こんなご老人居るよね〜!って感じのお爺ちゃんで、当事者目線だと同情レベルなんだけど、傍から見てる分には、どこか憎めないチャーミングなお爺ちゃんでした😂

ウチの親も歳なので、同じこと何度も聞くんだよね。5分もしないうちに言われるとイラッとしちゃうんだけど、上手いこと付き合ってる舅や太郎冠者を観てたら、私もそれくらい余裕を持ちたい、優しくなりたいと思った😂

てか暴走しそうになる祖父を止める時の幸雄さんの表情が絶妙だった😂

裕基くんの聟役は、もう得意中の得意でしょう(笑)
目の前で祖父と舅のやり取りを見ても動じないところは、天然なのか、それとも気にならないのか。

今回は、罪を憎んで人を憎まず、的な、狂言ならではの優しい世界がそこにありました。笑えるだけじゃなく、どこか、ほっこりした気分になれる選曲でした。

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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