念願のMANSAIボレロ【能楽観賞日記】#72

第四回 古典芸能を未来へ
~至高の芸と継承者~
狂言三代 野村万作・萬斎・裕基

2023年8月2日(水) 17:30開演
国立劇場 大劇場

もう間が空き過ぎて、思い出を振り返る、みたいなコーナーになってきましたが、むしろそんな感じで観劇日記を引き続き書いていきたいと思います😅

演目は、野村家親子三代による狂言小舞狂言「舟渡聟」新作狂言「鮎」、そして念願の初観劇となる「MANSAIボレロ」でした。ずっと観たいと思ってた「MANSAIボレロ」が、東京で観れると分かった時から飛びつきましたよね、えぇ。

てか、演目が“欲張りセット”みたいな豪華さで、驚きましたよね(笑)

(以下、観劇直後の感想メモに加筆修正したもの)

一、狂言小舞・三代

「鮒」 野村裕基
地謡:高野和憲・野村太一郎・中村修一・内藤連・飯田豪

「通円」 野村萬斎
地謡:高野和憲・野村太一郎・中村修一・内藤連・飯田豪

「住吉」 野村万作
地謡:野村萬斎・高野和憲・中村修一・内藤連

*・*・*

それぞれの年齢に応じた狂言小舞。
裕基くんは、フレッシュかつエネルギッシュで、逆に万作さんは、風流を感じさせる至高の芸を魅せてくれました。

一方、萬斎さんの「通円」は、以前から観てみたいと思っていたので、とても楽しみにしていました。

この小舞は以前、幸雄さんがやってるのを拝見したことがあるのですが、当時は私も能楽に関してはペーペーだったので、とても変わった小舞だなァ😳くらいにしか捉えておらず(苦笑)、後日、テレビで人間国宝の山本東次郎先生が解説付きでやってるのを観て、なるほど、そうだったのかと😅

んで、他の公演の番組を見て、萬斎さんが演ることもあるんだと分かり、いつか観てみたいと思っていました。

萬斎さんの「通円」は、今まで見た中で、一番、表情が豊かだったので驚きました😳
本人のお茶に対する魂が感じられ、まさに天職だったんだろうなァと。
これなら最後、まさに燃え尽きてしまうのも納得です😳

ちょっと予想外で期待以上のモノを魅せてくれたので、やっぱ、この人只者じゃないわ、と思いました😅

ちなみに紫の紋付を着ていましたが、紫の着物にグレーの袴という組み合わせが、私の好きな某作品の幕末キャラと同じだったので、好きと好きが重なって、勝手に喜んでました(笑)

やっぱり紫似合いますね😌
これからもドンドン着てください😁

*・*・*

二、「舟渡聟」

船頭・舅:野村万作
   聟:野村裕基
   姑:高野和憲

【あらすじ】聟入り儀礼のため舅宅へ向かう聟(演:野村裕基)は、道中渡し船に乗ったが、聟が手に持つ酒樽に目を付けた大髭の船頭(演:野村万作)は、その酒が呑みたい一心であの手この手で酒を強請る。聟は仕方なく酒を呑ませ、残り少なくなった酒樽を持って舅宅へ。応対に出た姑(演:高野和憲)に土産を差し出し、舅の帰宅を待つことに。一方、帰宅した舅(演:野村万作)は、家をたずねてきた自分の聟が先刻の客と知り、大髭を剃り落として初対面を装うが…。

*・*・*

内容は知ってたけど生で観るのはお初。

万作さんが得意とする古典の狂言を、孫の裕基くんと共に。
万作さんが若々しくて元気なので、つい当たり前のように観ちゃうんですけど、万作さんも萬斎さんも、早くに祖父を亡くしてることを考えると、奇跡の組み合わせですよね。

万作さんの船頭(舅)、とっても面白かったです🤣
ヒゲを剃られた後の、しゅん…😞とした顔も可愛かったし、高野さんの姑も良い味出してました。👍✨

裕基くんはこれまでも色んな聟を演じて来ましたが、今日も素晴らしいお聟さんでした。
船に座ってる姿は絵になるし、何より堂々と自信を持って演じてるし、もう聟役のプロと言っても良い(笑)

私が狂言を見始めて約1年半くらい経ちますが、その間に裕基くんは、狐披キやハムレットなど、様々な体験をして急成長したような気がします。
まさか私の中で、こんなに今後の成長が楽しみになる狂言師になるとは、最初は正直思ってなかったです。
今から彼が30代、40代になったときが楽しみです。

あと最後に舅と姑、聟が、それぞれ別の橋掛りから退場していたのが印象的でした。お互い帰るべき場所が違うので、とても自然な流れに感じると共に、橋掛りを一本追加しただけで、狂言というものは、こんなドラマティックになるのかと感心しました。

*・*・*

国立能楽堂委嘱作品

三、「鮎」

作:池澤夏樹
演出・補綴:野村萬斎

小吉:野村萬斎
才助:石田幸雄
大鮎:深田博治
小鮎:月崎晴夫・高野和憲・内藤連・中村修一・飯田豪

 笛:竹市学
小鼓:大倉源次郎

【あらすじ】人の将来を見通せる不思議な力をもつ才助(演:石田幸雄)は、ある日、鮎を釣っている最中に小吉(演:野村萬斎)という青年と出会う。才助は小吉にこの地で住むことを勧めるが、小吉は出世を目指し都会へ行ってしまう。そして数十年後、才助は大出世した小吉と再会することとなるのだが…。

*・*・*

こちらも、ダイジェスト動画を観た時から、ずっと観たいと思ってた作品なので、やっとその機会が巡って来て嬉しかったです。

今回はスクリーンや照明も活用した劇場版でしたが、どんな状況でもポジティブな可愛い鮎たちと最小限の小道具で、普通の狂言にはない、時間の経過を表現する手法は上手いなァと思いながら観てました。特に時間を巻き戻して、実は夢でした!(←盛大なネタバレw)という流れは素晴らしいと思いました👏

ハムレットの時も思ったけど、古典の技術を活かしたシンプルな演出に、萬斎さんらしさを感じられて好きだなァと思いました。
そして、そこに現代の技術を上手いバランスで加えることで、この新作狂言はやっと完成したんだな、と感じられました。

鮎のラスト、「龍が如く」ファンとしては、ちょっとそわそわしちゃったのですが(確かに歌舞伎町は夢と欲望が詰まった街🤣)

欲望に執着すると、心が貧しくなり、人望を失うことになる。

だけど夢に憧れてる内は、誰の忠告も届かないんだろうな。
だから小吉は変わらない。

そう思いました。

そんな小吉の姿を見て、人は何を思うのだろうか…

田舎者が都会に憧れる姿は、よくあることですが、いろいろ考えさせられますね。

ちなみに、萬斎さんのために作られた新作狂言なだけに、小吉と萬斎さんの芸風が凄く合ってますよね。
以前、小吉を演じるのは今回で最後かもしれないと言っていたけど、まだまだ、萬斎さんに演じて頂きたいです。
最後のロングトーンボイスも凄かったし😳😳😳

裕基くんに譲るのは、還暦迎えてからでも遅くないんじゃないかな〜と思うのです。

*・*・*

四、「MANSAIボレロ」

今回の大本命。
そして、何度でも叫びたい!君が好きだと叫びたい

萬斎さん、ブラボぉー!!!!!
👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏👏

ずっと生で観たいと思ってたMANSAIボレロ、
とても、とても、とても美しかったです…ッ!!😭

ファンになったばかりの時は、映像を見てる限りでは(古典を求めてたのもあって)三番叟の方が好きだったんだけど、🐯の洞窟を観てから、無性にMANSAIボレロを生で観たくなっちゃったんだよね。

でも地方公演が続いて、半ば諦め気味だった時に、この公演が実現して…早くも願いが叶って感無量です✨

先日、三番叟を観たばかりだったので、三番叟は雄々しくて、MANSAIボレロは女性的なんだな、と思いました。

ちょっと追記:先日、いしかわ百万石文化祭2023の開会式にて、またまた美しいMANSAIボレロを配信で拝見しましたが、改めてじっくり観てみると、完全に女性的というよりは、男性的(三番叟)と女性的(アメノウズメ)なところを行ったり来たりしてるんだなァと思いました。

とにかく、とにかくっ!
美しかった!!!!!✨✨✨✨
心が満たされた!!

ということで、ハッキリ言って番組的に、こんな贅沢な公演は、あとにも先にもないのではなかろうか?
そんな公演に足を運べたことは、とても幸運だったと思う。

後日テレビ放送もあるので、そちらも楽しみにしたいと思います(テレビだと座席で観るのとは違うアングルで見れると思うので)。

ということで、以下は番宣w

*・*・*

Eテレ〈芸能きわみ堂〉
11月3日(金) 21:00〜21:30
翌金曜 5:30〜6:00(再)
野村萬斎、狂言の神髄を語る

11/26放送の〈古典芸能への招待〉の演目の見所やバックステージを紹介。
スタジオゲストに野村萬斎・裕基親子が登場。
万作師のインタビューもあり。

*・*・*

Eテレ〈古典芸能への招待〉
11月26日(日) 21:00〜23:00
第4回 古典芸能を未来へ〜狂言三代 野村万作・萬斎・裕基〜

本公演の模様が放送されます!
10月に建て替えのため休場となる国立劇場での貴重な舞台です。

*・*・*

以上、お見逃しなく!!

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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