しぬしぬ詐欺な萬斎さんが可愛かった話(笑)【能楽観賞日記】#20

9月 観世会定期能
観世能楽堂
2022年9月4日(日) 13:00 開演

観世能楽堂に来るのはこれで5回目になりますか。気づけば一番訪れてる能楽堂になっておりました(今月もう一回観に行く予定があるねんw)。地元から行きやすい距離で銀座駅から地下直結だし、座席も千鳥配置で観やすいし、トイレの個室も多いから安心して休憩時間にトイレ行けるしで、結構気に入ってますね、はい。

今回の演目は、能『景清 -松門之出 小返之伝-』『船弁慶 -前後之替 早装束-』、そして狂言は『鎌腹』。能の番組表で、曲名の横に小さく書かれてるものは「小書(こがき)」と言って、特殊な演出を表しています。

能「景清」松門之出 小返之伝

悪七兵衛景清(シテ):山階彌右衛門
    人丸(ツレ):武田友志
 人丸ノ従者(トモ):大松洋一
    里人(ワキ):森常好

【あらすじ】かつての平家の勇将・悪七兵衛景清(シテ)は日向国に流され、盲目の琵琶法師となり生き長らえていた。そこへ幼少のことに別れた娘・人丸(ツレ)が訪ねてきて対面した景清は、源平の合戦の様を語り聞かせる。やがて娘に死後の弔いを頼み、別れの時となる。

*・*・*

人丸が訪ねて来た時、景清は落魄した身の上を恥じて「自分は盲目でそんな人は見たこともない」と他人のふりをするのですが、人丸は里人から事情を聞き、里人の仲介でようやく対面することに。あらすじを聞いただけで、ちょっとほろりとしてしまうような、しっとりとした曲でした。

今回も脇正面で鑑賞したのですが、柱にギリギリ邪魔されない中正面寄りのお席で、個人的にベストポジションだったので、父娘の再会のシーンはすごく絵になるような角度で鑑賞できました。個人的に脇正面の場合は、中正面寄りか橋掛り寄りに思いっきり寄った方が、役者が平行に並んだ時に重ならないので好きです(ただし中正面寄り過ぎると柱に邪魔されるケースがあるので注意)。

あとシテが使ってた能面が興味深かったのですが、写真が展示されてたので撮ってきました。盲目用というか、目を閉じてる能面もあるのねぇ。視界どうなってんねん!?って感じですが💦

狂言「鎌腹」

 太郎:野村萬斎
  妻:野村太一郎
仲裁人:石田幸雄

【あらすじ】太郎が怠けて薪を取りに行かないため、怒った妻は鎌を結びつけた棒を振り上げて追い回す。そこへ仲裁人が現れ、妻を連れて立ち去るが、残った夫は妻に殺されるくらいなら死んだ方がいいと思い、鎌で腹を切ろうとするが…。

*・*・*

能「景清」とはガラリと雰囲気変わって、いきなり妻が鎌で夫を追いかけ回すというドタバタなシーンから始まる演目、それが「鎌腹」(笑)。

しぬしぬ詐欺な萬斎さんが可愛かったー‼️🤣

実はDVDで観たことある演目だけど、流石に30代の時と今とでは、今の方がチャーミング度がアップしておりました。生で観れて良かった‼️ ラジオで狂言の登場人物は可愛く演じることを心掛けてるようなこと言ってたけど、ホントにそんな感じで、常に今の萬斎さんが一番好きだなと改めて思いました😌

あと太一郎さん演じる妻のご立腹っぷりも良かったし、仲裁役が幸雄さんは適任過ぎる(笑)。幸雄さんの存在感にほっこりしました😌

あらすじでは、仲裁人が現れ、妻を連れて立ち去るとありますが、どちらかというと「そんなの相手にしなくて良いから」と言わんばかりに妻が仲裁人を連れ帰ってましたね(笑

妻と仲裁人が退場してからは、萬斎さんの一人芝居が光ります。動きもDVDで観た時よりもキレッキレだったと思います。鎌を砥石で研ぐシーンも、砥石はエアーなのに研ぐ音が出ててリアルでした。んで入念に準備するも、死のうとしてるのに痛みに対する恐怖が勝ってしまい、結局最後まで実行できないヘタレっぷりがチャーミングで可愛かったです。妻も夫のそんな性格がよく分かっていたのでしょう(だから放置プレイ・笑

あと萬斎さんが被ってた頭巾、映像で見たやつと違ってて、良く見るタイプのじゃなかったですね(名称ググったけどよく分からんかった…)。なんとなくポケモンのユキワラシを思い出してしまい、可愛く感じてしまいました(笑)。

【ユキワラシ – ポケモンずかん】
https://zukan.pokemon.co.jp/detail/361

あくまでもイメージですが(笑)、屋根のように先が尖ってるタイプだったんですよね。個人的には、こっちの方がスタイリッシュで好きかもです(横から見た時、お顔が隠れ気味にはなってしまいますが…)

能「船弁慶」前後之替 早装束

静御前/平知盛ノ怨霊(シテ):観世三郎太
  源義経(子方):谷本康介
武蔵坊弁慶(ワキ):福王和幸
   船頭(アイ):野村裕基

【あらすじ】兄・頼朝と不和になった義経(子方)は、西国へ向かう途中の摂津・大物の浦で、船出の酒宴を行う。静御前(前シテ)は義経の再起を祈り、舞を舞う。名残を惜しんだ義経は、波が荒いから今日はこの浦に逗留するというが、弁慶(ワキ)は出航を決める。海上に出ると荒波となり、平家一門の亡霊が波に浮かんで現れる。平知盛の霊(後シテ)は、長刀を振るい義経に襲いかかるが、弁慶が密教の五大明王の力を借りて祈り返し、怨霊は波間に消え去って行くのだった。

*・*・*

シテが新作能『白雪姫』や『にほんごであそぼ』にも出ていた観世三郎太さん、ワキは能狂言『鬼滅の刃』にも出ていた福王和幸さん、そしてアイが萬斎さんのご子息である裕基くん。船弁慶は映像で観たことはあるけど生で観るのは初めて。しかも今回は小書があるので特殊演出版となります。

『前後之替』は、前シテの舞が中之舞から序之舞に変わります。序之舞は非常に静かな品位ある舞で、とてもゆったりとした動きのため、だんだん観てるこっちも、うつらうつら…としてしまいました💦
静御前の装束はピンクサーモン系の色をベースにしており、とても優しい感じで自分好みでした。扇の色も装束に合わせた色だったのが印象的でした。

『早装束』は、弁慶に出航を命じられたアイが船を持って再度出てきた時に、瞬時に装束も着替えて出てくるというもので、マジで数十秒の間に、裕基くんが一瞬で着替えて出てきたのでビックリしました😳💦

そしてアイが船を激しく漕ぐシーンで、裕基くんが被ってた頭巾がズレてお顔が半分隠れてしまったんだけど、動揺することもなく、そのまま演技を続行。するとタイミングみて切戸口から深田さんが出て来て直してあげてました。ちょっと貴重なものを見たかも🤔

この演目は華やかで劇的な構成の能なのですが、それを支える囃子方も素晴らしくて、特に平知盛の怨霊が出て来て盛り上がるところが凄かった~‼️ 特に大鼓の亀井さんの気合いが凄くて、その場全体のバトル感が凄かった‼️ 益々ファンになってしまいました💕

シテの三郎太さんも軽やかな感じで舞っててカッコ良かったし、揚げ幕を半分だけ上げて、平知盛の怨霊が本舞台の方を観ている場面では、私の座席位置(脇正面)からだと、知盛の右半身が壁に隠れてる状態だったので、背景は暗闇だし、怨霊感半端なかった😅💦

子方の子も声変わり前なのに大人同様の演技をしてて良かったと思います(なぜ源義経を子方が演じるのかというと、一説によると人気者である義経を大人が演じては、前シテの静御前がかすんでしまうからだそうです※諸説あり)。

有名な一節「その時義経、少しも騒がず」は、能狂言『鬼滅の刃』でも応用されてたので、鬼滅で能狂言に興味持った方は是非一度『船弁慶』も観て頂きたい。私も今回初めて生で観て、また観たいなと思いました(てか、観る予定あるんですけど・笑。次のアイは高野さんなので、こっちも楽しみ〜💕)

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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