人生初の狂言梯子【能楽観賞日記】#19

夏のめぐろ狂言
めぐろパーシモンホール 大ホール
2022年8月28日(日)18:00 開演

8月の能楽鑑賞日記がついに6本目まできてしまった。
1ヶ月で狂言鑑賞した記録としては過去最高です💦
とても充実した夏でした。

この日は昼間に横浜能楽堂で行われた『平家物語の世界 -語りの伝承 巻二十五-』を観ており、時間的に間に合いそうだったので、人生初の狂言梯子になりました。

めぐろパーシモンホールは初めて来ました。この『めぐろ狂言』も、夏〜秋頃に毎年行われているようで、今回が初参加となります。チケットは一般で取ったので1階12列目と少し後ろの方になりましたが、段差がしっかりついてる会場でとても観易かったです。2階席には小・中学生が招待されていたようです。

最初に目黒区長さんのご挨拶があり、その後、深田さんの解説へ。時間を気にしながら(笑)見どころを丁寧に解説して頂きました。「鬼瓦」以外は初見の演目なので助かりました😌

狂言「佐渡狐」

佐渡の百姓:野村裕基
越後の百姓:内藤連
   奏者:石田幸雄
   後見:飯田豪

【あらすじ】年貢を納めに都へ上る途中で道連れになった佐渡と越後のお百姓。佐渡に狐のいるいないを巡り賭けをすることになったが、実は佐渡には狐はおらず、狐を知らない佐渡のお百姓は、奏者(取次の役人)に賄賂を使い味方についてもらう。しかし奏者の「佐渡に狐はいる」という判定に納得のいかない越後のお百姓に、狐の形格好を問いただされ…。

*・*・*

裕基くんが出て来た時、表情の作り方も萬斎さんに似てきたなァと思う今日この頃。

印象的だったのが、裕基くん演じる佐渡の百姓と、奏者役の幸雄さんの賄賂のやりとり😂
初めは賄賂なんてけしからんと断るのだけど、しつこく迫る佐渡の百姓に、そこまで言うなら…といわんばかりに、何食わぬ顔でそっと文字通り袖の下で賄賂を受け取る幸雄さんが絶妙でした😂

その後、佐渡の百姓は奏者に狐の特徴を教えてもらうのだけど、そんなの一度聞いただけでは覚えられるはずもなく、越後のお百姓に狐の形格好を問いただされた時には珍回答連発😂

奏者の協力(カンニング)で何とか切り抜けたものの、外に出たところで、今度は狐の鳴き声を問いただされ、佐渡の百姓はもちろん答えられず、賭け物の刀を取り返されてしまうのでした。

嘘はいつかバレるし、賄賂もいけません!誠実に生きるのが一番です(笑)

狂言「鬼瓦」

  大名:野村万作
太郎冠者:野村太一郎
  後見:月崎晴夫

【あらすじ】長らく在京していた大名が、無事訴訟も叶い帰国することになる。これも日頃信仰している因幡薬師のおかげと、お礼と暇乞いのため太郎冠者を連れ参詣に出向く。お参りを済ませた二人がお堂の様子を見て回るうち、ふと見上げた屋根の鬼瓦が目に留まる。すると大名は急に泣き出してしまい…。

*・*・*

以前、太一郎さんの新作能「白雪姫」の会で、三宅右近・右矩親子ver.で観ており、しかも前回は脇正面だったけど、今回はホールで強制的に正面からの鑑賞なので新鮮な気持ちで観ることができました。

三宅右近・右矩親子ver.も良かったけど、万作さんも人間国宝なだけあって凄いですわ。無いものを有るように見せる芸風が人一倍すごいので、大名と一緒にお寺を見て回ってるような気分になりました。そして、鬼瓦を見つけた時の表情が絶妙で…😢

決して美人ではないのだろうけれど(苦笑)、故郷に置いて来た妻への愛情を感じる、ほのぼのとした狂言です。

狂言「宗論」

浄土僧:野村萬斎
法華僧:中村修一
 宿屋:高野和憲
 後見:岡聡史

【あらすじ】身延山から帰る途中の法華僧と、善光寺帰りの浄土僧が道連れになるが、互いに犬猿の仲の宗派と知り、自分の宗旨に改宗せよと言い争う。嫌気がさした法華僧は口実を設けて別れようとするが、浄土僧はしつこくついて来る。たまらなくなった法華僧が宿に逃げ込むと、浄土僧も追って入り、今度は宗論(教義問答)を始める。二人は次第にむきになって…。

*・*・*

初めに法華僧(中村さん)が出て来て、後から出て来た浄土僧(萬斎さん)にライバル宗派とは知らずに声をかけるのだが、たまたま声をかけた相手が実は超面倒臭ぇぇタイプの人間だったって感じで、どこまでもしつこく追いかけ、法華僧役の中村さんにちょっかいを出す萬斎さんが光輝いており、おそらくこの法華僧は浄土僧に声をかけたことを後悔したことでしょう🤣

何故か面白い玩具でも見つけたかのように、法華僧をロックオンした浄土僧(笑)。嫌気がさした法華僧は、他に用事があるから先に行けと促すも、浄土僧は5年でも10年でも待つと言う始末🤣

隙を見て法華僧が宿に逃げ込むと、浄土僧も追いかける。しかも先に入った法華僧はツレなんだと嘘をついて同じ部屋にしてもらう🤣(この時の宿屋役の高野さんが、これまた良い笑顔とお声なのよw)

宿では、いよいよ宗論が始まるのだが、法華僧の説く「五十展転随喜(ずいき)の功徳」が、ずいき芋汁の話になり、浄土僧の「一念弥陀仏即滅無量罪(ざい)が、献立の菜(さい)の話に変貌してしまい、互いの法話のあまりの阿保らしさに、2人は寝入ってしまう。

翌朝、先に目覚めた浄土僧が、嫌がらせのように(爆)朝の勤めとして、大声で経を読む。この時、数珠でペシペシ相手を叩くシーンも、絶妙な間と数珠捌きで、それだけで笑えてしまうから不思議🤣

法華僧も応戦し、お互いが経を読むうちに興にのり、浄土僧は踊り念仏、法華僧は踊り題目で浮きに浮く(この二人、昼間は「呼声」で浮きに浮いてたので余計に可笑しかった🤣)。

そのうち2人は忘我の境地に至り、浄土僧が「蓮華経」、法華僧が「南無阿弥陀」と互いの宗派を取り違えてしまい、ハッとする。仏の前では宗派争いなどはささいな問題と悟った二人は、揃って舞を舞って納めるのでした。

構ってちゃんのような面倒臭ぇ男な浄土僧を萬斎さんがとてもコミカルに演じており(小・中学生も観てたので、より分かりやすくしてたような気がしないでもない)、法華僧役の中村さんがまともに、真面目に、演じれば演じるほど、萬斎さん演じる浄土僧の異様さが光り輝いておりました🤣

一昨日に観た「箕被」も面白かったし、萬斎さんの芸風は、こういう役が似合うんだなァ、と思った夜でした😌

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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