野村萬斎師の“間狂言”を初観劇【能楽観賞日記】#12

国立能楽堂 7月定例公演
2022年7月20日(水)17:30 開演

先日、国立能楽堂の【定例公演】に初めて行ってきました。
狂言と能が1曲ずつ、かつチケット代がリーズナブルなので初心者でも観やすい公演です(チケットは国立能楽堂のサイトから購入できます)。

実際に客層も普段のお能の会に比べるとラフな感じの方が多かったような…。隣に座っていた方はお能を習ってるのか、懸命に何かをメモりながらお能を観ておりましたし、斜め前の方は途中、夢の中に入ってるようでした(苦笑)。まぁ、何が言いたいかというと、能楽堂って場所は畏まったところではなく、楽しみ方は自由だし、意外と“気軽に非日常を味わえる所”なんですよってことです。

私がゲーム好きなのは、ゲームというメディアが非日常を体験させてくれるものだからなのですが、同じく能狂言、中でも能楽堂での公演にハマったのは、能楽堂で行われる能狂言が大好きな和の雰囲気一色で癒してくれるからなんだと思います。自分は普通にサラリーマンで「お金を貰って好きなコトをしてる」人間なので、現実世界から切り離された時間がないとメリハリもって働けないんですよね(若い頃は、その現実逃避先が音楽ライブだったりしたのですが、、、)。なので、今では良い世界に出会えたなと思ってます。貯金できなくなるけど(爆

普及公演・定例公演では、国立能楽堂の座席に設置された字幕システムが稼働してるのも特徴(シテ方主催の会など、いつでも稼働してるわけではないので注意)。私も今回初めて利用しましたが、タッチパネルで言語を選ぶだけなので、誰でも簡単に使えます。簡単なあらすじ・解説と、謡の時は謡の字幕が表示されます。

狂言「御冷」(和泉流)

太郎冠者(シテ):石田幸雄
   主(アド):高野和憲

【あらすじ】
水のことをわざわざ「お冷やし」と言う主人を笑う太郎冠者。水かお冷やしか、言葉争いが繰り広げられます。

*・*・*

万作の会から石田さんと高野さんがご出演。高野さんの狂言は久しぶりに見た気がします。ここ最近は私が行く公演は居るには居るんだけど後見ばかりだったので😅

主人が上品ぶってお水のことを「お冷やし」というので、それを太郎冠者がカッコ付けないで普通に「水」と言えば良いではないかと論争を繰り広げます。太郎冠者の主人に対する物言いから、この主人はあまり地位は高くないのかもしれませんね(笑)。二人は古歌を引いて言い争いますが、太郎冠者の方が一枚上手で、この力関係を見て配役に納得しました(笑)

能「芦刈」(喜多流)

日下左衛門(シテ)  :大村定
左衛門の妻(ツレ)  :大島輝久
 妻の従者(ワキ)  :舘田善博
同行の従者(ワキツレ):梅村昌功
同行の従者(ワキツレ):野口琢弘
難波の里人(アイ)  :野村萬斎

【あらすじ】
家の零落のために行方知れずとなった夫(日下左衛門)。心を乱し芦売りとなったその夫の前に妻が現れます。夫は身の上を恥じますが、妻と歌を交わし心を通わせ再会を喜びます。

*・*・*

今回、初めて萬斎さんの【間狂言】を拝見しました。

通常の狂言(本狂言)とは別に、お能の中で狂言方が担当する役が間狂言(アイ)です。そして間狂言と一口に言っても色々パターンがあり、通常良く観るのが、シテの中入リの間に登場して話題を語って去っていく「語り間(あい)」なのですが、今回は現在能ということもあり、萬斎さんの役どころは、アイとワキの掛け合いを通じて、偶然にも、離れ離れになった夫婦の再会に一役買う里人という重要な役どころでした。

零落した日下左衛門(シテ)は行方知れずになっており、それを聞いた左衛門の妻(ツレ)と従者(ワキ)の一向は、夫を探すために暫くその地に留まることにします。里の者(アイ)に夫の行方を聞きに行った従者は、夫の行方は分からないが、代わりに面白い芦売りの男が居ると聞き見物へ。ここでアイがシテ(芦売り)を呼び出します。

男の物狂いということで、今まで観てきたお能とは毛色が違った演目で何だか新鮮でした。<カケリ><名所教え><笠之段>、そして後半では<男舞>とシテの芸尽くしの演目だったのですが、この前半の長〜い舞の部分、、、

ずっと、萬斎さんが橋懸かりの上で待機してるのです!!😳😳😳

どうやらアイの出番はこれで終わりではないらしく、私の演目に対する集中力の2割は推しに持っていかれました(居たら見ちゃうじゃん、やっぱり笑)。字幕を見つつ、シテの舞を見つつ、推しも見る、みたいな忙しい状況のお陰で睡魔に襲われる暇もありませんでした(まぁ、最近は割と起きていられるようになったけどね笑)。出番が終わったらさっさと退場しちゃうのがアイなので、これは嬉しい誤算でした。

実はアイが呼び出したこの芦売りが、零落した日下左衛門本人でした。そして芦売りが妻に気付いて一旦その場から逃げ出しますが、迎えに行った妻と和歌を通じて心を通わせ、ハッピーエンドへ。アイがお祝いの言葉を述べると、やっと退場です(演目自体はもう少し続きます)。

ホントに台詞よりも待機時間の方が長かったですね😅💦てかアイだけでなく、ツレもワキもワキツレも、ずっと微動だにしないで長い間、待機状態だったので、大変な演目だなと思いました😅💦

今回の萬斎さんは、普段のコミカルな抑揚を封印した真面目なトーンの間狂言で渋さがあり、通常の狂言をやってる時とは違う萬斎さんの一面に触れられたので、平日でしたが思い切って観に行って良かったと思いました。そして先日、三番叟を観たばかりだからか、能楽の中でも狂言方は本狂言だけでなく、間狂言や三番叟といった舞など担うことが沢山あり、狂言師の存在感の奥深さも感じましたね。

ちなみに喜多流のお能を観るのは5月の自主公演以来かと思うのですが 、その時も思ったけど、装束のチョイスというか色合いが私好みで今回もそうでした。黒を基準とした着物はカッコイイ。期待通りで満足。充実した1日となりました😌

んで最後に・・・

萬斎さんが案内人となって国立能楽堂と狂言の楽しみ方を解説するVR動画(無料コンテンツ)が配信中です!

舞台上からの景色も確認できるので、国立能楽堂に行ったことある人も無い人も必見ですよ!😉

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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