令和5年7月歌舞伎鑑賞教室【歌舞伎観賞日記】#7

令和5年7月歌舞伎鑑賞教室
『双蝶々曲輪日記-引窓-』

国立劇場 大劇場
2023年7月10日(月) 14:00開演

FFX歌舞伎をキッカケに、これまで明治座や歌舞伎座に通って来ましたが、今回は国立劇場の歌舞伎鑑賞教室に、キマリ役の彦三郎さんブラスカ役の錦之助さんがお出になるということで、観てまいりました。

国立劇場に行ったのは今回で2度目です。
昨年、国立劇場で行われた長唄の会に推しの野村萬斎さんが出るということで行ってたんですよね。

その時は「建て替えで来年休館になるし、これが最初で最後かな」なんて思ってたのですが、全然行く機会がありましたね(笑)

人生、いつ何にハマるかホントに分からない🤣

あと、国立能楽堂のチケットを取るために、実はあぜくら会員だったりもして、せっかくあぜくら会に入ったんだから、歌舞伎も観ておきたい、という気持ちもありました。

未来へつなぐ国立劇場プロジェクト
初代国立劇場さよなら公演

解説「歌舞伎のみかた」
澤村宗之助

歌舞伎「双蝶々曲輪日記-引窓-」
南与兵衛後ニ南方十次兵衛:中村芝翫
 女房お早:市川高麗蔵
 平岡丹平:中村松江
 三原伝造:坂東彦三郎
  母お幸:中村梅花
濡髪長五郎:中村錦之助
                   ほか

*・*・*

前半は「歌舞伎のみかた」ということで、幕が上がると、廻り舞台が回転しながら、全ての迫り(せり)が上下に動き出し、照明を上手く使って芸術的に、歌舞伎の舞台装置はこうなってるんだよってのをアピール。
普段、能楽を観てる身としては、その舞台そのものの大きさとカラクリに、歌舞伎がいかに大ががりな演劇なのか、改めて実感しました。

その後、宗之助さんが出てきて、見得やツケなど、歌舞伎の基本についての説明をしてくれました。FFX歌舞伎でもオオアカ屋さんが解説してくれたけど、それと同じ感じです。
歌舞伎を楽しむための特徴を教えるのって凄く大事ですよね。私も、歌舞伎へのハードルが下がって今があるのは、オオアカ屋さんのお陰なんですよ。

歌舞伎の基本の解説が終わると、次は演目と登場人物、時代背景についての説明。相関図付で、とても分かりやすかったです(一応、イヤホンガイドは借りましたが)

3階席最前。ギリギリ手摺がかからないので、ちゃんと見える。

休憩を挟んで、いよいよ演目へ。
主演は中村芝翫さん。先月の歌舞伎座でも拝見しましたが、その時はイケメンな役だったけど、今回は、ちょっとチャーミングで可愛らしい一面も魅せてくれます。

話は、芝翫さん演ずる与兵衛が留守中、妻のお早と母のお幸が待つ家に、錦之助さんが演じる人気力士「濡髪長五郎」がやってくるところから始まります。

錦之助さんも歌舞伎座でも拝見してますが、いつもの爽やかな雰囲気とは全然違い、力士なので着肉を着込んで太い声を出しており…役者というのは、ここまで化けられるのか😳と思いました。御本人もパンフでコメントしてましたが、さすが、“よろず”屋、と言ったところでしょうか。

実はこの長五郎、恩人を助けるために人を殺めてしまい、捕まる覚悟はしたものの、その前に実の母であるお幸に一目会いたいと、逃亡してきたのでした。

主人公の与兵衛とお幸は親子関係ですが、後妻なので血の繋がりはなく、お幸も再婚の為に当時幼かった長五郎を養子に出していたのでした。後に再会し実の親子関係を取り戻したお幸と長五郎ですが、与兵衛には気を使って、この事実は伝えていませんでした。ちなみに、与兵衛とお幸は、血の繋がりはなくとも、こちらも実の親子のように仲良しでした。

思わぬ来客に喜ぶお幸。長五郎をもてなす為、2階の座敷へ通すと、与兵衛が何やら侍を二人引き連れて帰って来ました。
父の死後、町人として暮らしてきた与兵衛は、ようやく後を継ぐ事を許され、侍の身分となり、郷代官になったのでした。

しかし、出世に喜んだのも束の間、与兵衛が連れてきた侍ふたりは、長五郎が殺めた人物の兄弟で、犯人である長五郎を追っており、与兵衛にも郷代官として手伝うよう命じられたのをこっそり聴いていたお早とお幸は驚いてしまいます。

ちなみに、この侍二人のうちの片方が、キマリを演じてた彦三郎さんだったのですが、相変わらず良いお声でした💕

侍二人は明るい昼間に捜索し、土地に慣れてる与兵衛が夜間の捜索を担当することになりました。そして、侍二人が去った後、妻のお早は、それとなく、その任務をやめさせようとするのですが、長五郎の存在に気付かれてしまい、ここで手柄を立てようとする夫と、姑の為に長五郎を守ろうとする妻との攻防へ。夫婦喧嘩のようになってしまいます。

そこへ、お幸が割って入り、密かに貯めてた大事なお金を出して来て、長五郎の姿が書かれた人相書きを売って欲しいと頼み込みます。どうして妻が邪魔をするのか、そして母が何故そこまでするのか…考えた与兵衛は、そこで察しました。母が昔、養子に出した実子が長五郎であることを。

ここで与兵衛は、血の繋がりはなくとも、実の母のように思ってるお幸を悲しませることは出来ないと、長五郎の逃亡を助けるために粋な計らいを連発します。そして、この家族に説得された長五郎は、最初は捕まろうとしたものの、最後は母の願いを受け入れて再び逃亡の道へ。ここで幕が降りますが、果たしてその後どうなったのか気になるところです。

7月だったので、場内は七夕仕様に装飾されてました。

ということで、真実に気付いてからの主人公の心意気がとても清々しくてですね、凄い家族愛が描かれてるなァとホロリものでした。主人公がここまで振り切れたのも、殺めた相手の評判が悪かった事を知っていたこともあるでしょう。罪人とはいえ、色々な事情を察したのだと思います。

ということで、役者さんたちも仰っておりましたが、確かに心温まるいい作品でした。

▼前回の歌舞伎鑑賞日記はコチラ

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