御贔屓繫馬〜市川猿之助奮闘歌舞伎公演〜【歌舞伎観賞日記】#3

明治座創業百五十周年記念『市川猿之助奮闘歌舞伎公演』

三代猿之助四十八撰の内『御贔屓繫馬』
大喜利所作事 蜘蛛の絲宿直噺

明治座
2023年5月7日(日) 16:00開演

■上演期間:2023年5月3日(水・祝)~28日(日)

■四世鶴屋南北 作
■奈河彰輔 脚本
■市川猿翁 脚本・演出
■石川耕士 補綴・演出
■市川猿之助 演出

    相馬太郎良門
     女童熨斗美
      小姓澤瀉
     番新八重里:市川猿之助
     太鼓持彦平
      傾城薄雲
   実は土蜘蛛の精

      桔梗の前:中村米吉
台屋の四郎次/源頼光:中村隼人
      滝夜叉姫:市川男寅
 御厨正頼/碓井貞光:中村福之助
      卜部季武:中村歌之助
     百足のお百:市川團子
 石蜘法印/坂田金時:市川青虎
      仲居お万:市川寿猿
     熊手のお爪:下村青
      猪熊入道:嘉島典俊
   金時女房八重菊:市川笑三郎
   貞光女房桐の谷:市川笑也
伊賀寿太郎/平井保昌:市川猿弥
       渡辺綱:市川中車
       源仲光:市川門之助

今月初め、前回の『不死鳥よ 波濤を越えて』に引き続き、猿之助さんの夜公演の舞台を観に行ってたのに、ずっと忙しくて怠けてたら感想を書きそびれました。まさか、猿之助さんの姿を観るのが、これで最後になるとは夢にも思わず…いや、まだ最後とは決まったわけではないけれど、暫くは拝見できないわけで…。でも、せっかくだからブログにも残しておきたいと思います。

ちなみに『御贔屓繫馬』は、病死した相馬太郎良門を女郎蜘蛛の生き血を使って蘇らせる話。後半の『蜘蛛の絲宿直噺』は、源頼光の土蜘蛛退治を題材にした話で、蜘蛛の精があの手この手(五変化)を使って、病に伏せる源頼光の寝所に忍び込もうとします。

観劇した時の感想は、当日にツイートしたので、そちらでも見れますが、要約すると、

・偶然にも宙乗り通算1,400回達成に立ち会えたこと!🎊

・見事な大立ち回りあり、早替りありと、まさに猿之助さんが奮闘しており、凄い舞台だったこと!

・猿之助さん演じる蜘蛛の精が、女童、小姓、番新、太鼓持、傾城へと次々と姿を変え、周りの人間達を翻弄していくのが印象的だったこと。

・ただ凄いだけじゃない。年齢や性別までもを自由自在に操る、その芸はお見事だった!

・五変化は蜘蛛の精が化けてる定なので、とても妖艶で、舞もしなやかだった。

・あまりの凄い内容に、流石、我が推し様(萬斎さん)も一目置く存在だと思ったこと。

・中の人ネタや時事ネタも割と多くて、歌舞伎役者について詳しくなったら、もっと楽しめるんだろうなァと思ったこと。

・團子さんを初めて拝見し、米吉さんに負けず劣らずの女形で、めっっっちゃ可愛かったこと。

・夜の部の米吉さんも女形だが、途中男装するシーンがあり、中性的なお声なので、男装女子感が凄い出ていたのが印象的だったこと(しかも中性的なお声で、と演技指導したのが猿之助さんの案だったと後から知った。お見事でした。)

・初めてお弁当を買って、幕間に食べたらお上品なお味で美味しかったこと🤗(笑)

・・・と、まぁ、こんな感じです。

んで、この『市川猿之助奮闘歌舞伎公演』に魅せられた私は、追いチケをしました。猿之助さんの奮闘ぶりに感動し、心を動かされたのです。もう一度観たいと思ったのです。

しかし…それは叶わぬ夢になってしまいました。どうして、こんなことになってしまったのか、しかも何故、本人があんな悪手を打ってしまったのか、今でも分かりません。

混乱の中、明治座は代役を立てて上演を継続することにしました。夜の部の代役に隼人さんが選ばれたのは、元々千穐楽で主演を交代して演じることが決まっていたので、稽古済みという意味でも、それは想定内でした。

問題は昼の部『不死鳥よ 波濤を越えて』でした。歌舞伎レビューなだけあって特殊な演目。通常の古典歌舞伎と違い、代役を立てるのは難しいだろうと思いました。しかし、ここにきて、まだ19歳の團子さんが大抜擢され驚いたと同時に、また『波濤』が観れるんだと思ったら嬉しくなり、團子さんの勇気には本当に感謝致しました。

5月22日(月)、團子さんと隼人さんの若手二人の奮闘公演を見届けてきました。こちらも、感想は当日のTwitterに書いてあるので、そちらを見ていただければと思いますが、團子さんの臆せず堂々とした佇まいには、本当に感動しました。

以前、歌舞伎夜話特別編「歌舞伎家話 第二十一回」に萬斎さん親子と対談した時の第一印象では、歌舞伎が大好きで、今は修行中の身だから他のことには興味なく、とても謙虚で大人しいイメージだったので、その時とのギャップに驚かされました。初めての大きなお役とは思えないほどの奮闘ぶりで、こんな力を秘めていたのかと。一度、猿之助さんで観てるので、前半は彼と重なる部分が多々ありましたが、それも、お手本通りに演じるのが上手いのかな、と後になってから思うようになりました。年齢的に、彼の個性が出てくるのは、もう少し先になってからでしょう。

彼への想いは写真と共にインスタにも書いたので貼っておきますね。

夜の部の隼人さんも、予定外のことで大変だったかと思いますが、そんなことを感じさせない完璧な演技だったと思います。日頃から稽古してたお陰か、安定感も感じました。またイケメンなので、出てきた瞬間カッコイイ!!と思ってしまいました(笑)。猿之助さんとは違う、カッコイイ良門が居ました。ただ、容姿が恵まれ過ぎてて、三枚目チックな役をやるときに、それがかえって邪魔に感じてしまう瞬間があったのですが、でも、それはそれで冴羽獠チックで、これはこれでアリかもと思いました(笑)。

やはり猿之助さんと比べてしまいますね…。猿之助さんは、二枚目も三枚目も、少女の姿も、妖艶な女性の姿も、外見だけでなく、中身もそういう風に魅せてきますから。そのキャラクターが憑依したかのように。てか、それをもう一度観たかったのに…。

『市川猿之助奮闘歌舞伎公演』は、本人不在のままとはいえ、若手たちの奮闘により昨日、無事千穐楽を迎えました。最後に隼人さんは「我々はずっと味方でいようと思います」と仰ったそうで、それを聞いた瞬間、また泣けてきました。

もちろん罪を犯したのであれば、それは償うべきですが、本人にその気があるのであれば、罪を憎んで人を憎まずな世界があっても良いのでは、と思います。死んで生まれ変わるのではなく、生きたまま、生まれ変わって欲しいと思います。

ちなみに私は、死後の世界も輪廻転生も信じていません。仮に輪廻転生があったとしても、それ、もう別人なので。自分の人生じゃないので。人生に二周目なんてないんですよ。。。

▼前回の歌舞伎鑑賞日記はコチラ

AD

シェアする