秀句の効いた「第99回 野村狂言座」【能楽観賞日記】#17

第99回 野村狂言座
宝生能楽堂
2022年8月26日(金) 18:30 開演

万作の会主催の『野村狂言座』へ行って来ました。『野村狂言座』はこれで3度目の参加ですね。いつもは木曜日の昼の公演に行くのですが、この時の木曜日は仕事が休めなかったので、金曜日の夜の公演へ。

本日のお座席は、脇正面4列目の橋掛り寄りのお席。4月の狂言座の時と然程変わらない位置だったので、ぴあで脇正面を取るとこの辺が割り当てられるのかしら?と思ったりw🤔

今回の演目は、狂言「秀句傘」「酢薑」「箕被」という秀句(洒落)の効いた3曲を野村家親子三代がそれぞれシテを務め、ラストに賑やかで楽しい狂言「首引」を若手が中心に務めるという構成でした。中でも明るく楽しい狂言『酢薑』を裕基くん&淡朗さんの息子組が、なかなか難しい曲とされる『箕被』をベテランの萬斎さん&幸雄さんの父親組が演じており、なかなか面白い配役だったなと思います😌

解説は石田幸雄師。幸雄さんの解説は初めて聴きましたが、正座スタイルで「この時間は出入り自由なので」と、ユーモアも交えながら優しい雰囲気で分かりやすく解説して頂きました。

狂言「秀句傘」

  大名:野村万作
太郎冠者:高野和憲
新参の者:野村太一郎
  後見:深田博治

【あらすじ】大名が太郎冠者を呼び出し、この頃寄り合いの場でみんなが笑い合っているのはなんだろうと尋ねる。太郎冠者が、それは秀句(洒落)だと教えると、大名は、自分も秀句を習いたいので秀句のできる者を探して来いと命じる。太郎冠者は街道へ出かけ、元は傘職人だった板東方の男と出会う。男が、傘についての秀句なら言えるというので早速連れ帰るが、大名は男の言う秀句を理解できず、腹を立てる始末で……。

*・*・*

今も昔もたまにいるシャレの通じない真面目な人。そもそも洒落を勉強しようとしてる時点で間違っているのだが(苦笑)、そんな大名を万作さんがチャーミングに演じていたのが印象的。

元傘職人の男(太一郎さん)の洒落が通じず、怒り出す大名に対して、太郎冠者(高野さん)が、今のが洒落なのだと教えると、では元傘職人の男が発する言葉は全て洒落なのだな!?と極端な発想に展開し、男が発する言葉全てを洒落だと思い込んだ大名は、今度は分かったフリをして大笑い。更には刀や扇子など褒美まで授けてしまう始末(笑)

そして男に与えるものが無くなった大名は、着ていた着物まで脱ぎ出し……!?

以前観た、狂言「入間川」と同じ展開になってしまった😂
てか、萬斎大名が着物を脱ぎ脱ぎするシーンは他の演目で3度ほど観てるけど、とうとう万作さんver.まで観てしまった😂

ただ「入間川」と違うのは与えた物を全て持ち逃げされてしまうということ(苦笑)。着物を奪われてしまった大名は、男から貰った和傘を使ってしっとりと舞い、、、

「秀句とは寒いものじゃ」

と言って、和傘を抱きしめながら退場していくのですが、その時の万作さんの表情が何とも言えない、切なげな表情でした。

傘に因んだ洒落を古典の言葉で聞いて理解するのは、解説ありでもなかなか難易度が高く、初見では難しかったのですが、大名のように「知ったかぶり」をするとどうなるか……という点では考えさせられるものがありました。

狂言「酢薑」

酢売:野村裕基
薑売:石田淡朗
後見:中村修一

【あらすじ】津の国の薑売り(薑=生姜のこと)と和泉の国の酢売りが、それぞれ都へ商売にでかける。酢売りが売り声を上げるのを見た薑売りは、自分に断りなしで商売させるわけにはいかないと文句を言い、いかに薑売りが由緒正しい商売であるかを語る。酢売りの方も負けじと自分の由緒正しさを語るので、どちらが優っているかの決着をつけるため、秀句を言い合って勝負することになるが…。

*・*・*

薑売り(淡朗さん)と酢売り(裕基くん)が秀句の掛け合いを行なっているうちに、興に乗ってきた二人は勝負を忘れて仲良くなるお話。特に淡朗さんはニコニコ顔が印象的なので、こういう狂言は相性が良いように思います。裕基くん&淡朗さんの息子組という組み合わせも良きでした😌

狂言「箕被」

 夫:野村萬斎
 妻:石田幸雄
後見:野村裕基

*・*・*

先日、他のお家ver.で観たばかりの演目なので、あらすじは割愛。

↑この時は、演者が初演で熟してなかったせいなのか、はたまた解釈違いなのか、客席からの笑いは殆んど無く、その時の解説で笑いよりも連歌の風流を重視した曲と聞いていたので、私もこんなもんか?🤔と思っていたのですが…

この日の『箕被』はとても面白かった!
萬斎&幸雄夫妻は最高でした👍✨

演者でこんなにも印象変わるのかと驚きました👀
てか、萬斎さんなら芸風的にもう少し上手く魅せてくれるのでは⁉️とちょっと期待しながら観たのですが、まさに期待通りでした👍✨

…って、好きだからってちょっと贔屓し過ぎか?😅
と思ったけど、客席から笑いが度々起きてたのが何よりの証拠😌

そもそも幸雄さんの解説の段階で、趣味に没頭する駄目夫臭をプンプンさせてたので(お別れのシーンなのに、しんみりするどころか一句詠んでしまうというダメ夫っぷりが・笑)、私も視点がそこにいき、そして、その駄目夫を萬斎さんがいつもの独特の声の抑揚と絶妙な間で、チャーミングに演じきっており最高でした❗

萬斎さんの芸風が好きで、狂言役者としても観たいと思わせてくれるお人だなァと再確認しました😌

そしてアドとして幸雄さんが演じた妻からは、駄目夫に愛想つかしたオーラをビンビンに感じ(笑)、二人のやり取りが面白くてこの夫妻最高❗と思いました。シテもアドもベテランじゃないと演じられない曲と聞いてたけど、こういうことか、と思いました。ナイス配役でした👍✨

ちなみにヨリを戻した後も必見で、萬斎さんの謡が聴けて耳が幸せでした😌💕
ただ、萬斎さんver.だと、この夫は今後も趣味に没頭する駄目夫のままの気がします(笑

あと余談ですが、ふと後見の裕基くんに目をやると、師匠の前だからか、真剣な眼差しから、そこだけ緊張感が漂ってたような気がしました😅

狂言「首引」

親鬼:内藤連
鎮西八郎為朝:竹山悠樹
姫鬼:中村修一
眷属:月崎晴夫・高野和憲・深田博治・飯田豪・岡聡史
後見:野村太一郎

【あらすじ】都へ上る途中の鎮西八郎為朝(源為朝)が、播磨の印南野までやって来る。怖いもの知らずの為朝が、日が暮れて人通りもなくなった寂しい野を歩いて行くと、鬼が出てきて襲いかかる。鬼は、自分の娘が人の食い初めをまだしていないと言って娘を呼び出し、為朝を食べさせようとするが、姫鬼が近づくと、すかさず為朝が叩くので、姫鬼は泣きながら親鬼の元へ戻ってきてしまう。為朝は、姫鬼と勝負をして、負けたら食べられようと提案し、腕押しやすね推しをするが、姫鬼は勝てない。今度は首引をすることになり…。

*・*・*

初見の演目でしたが、内藤さんの子煩悩なパパ鬼が予想以上に良かったです。
最近、内藤さんをよく拝見しますが、結構骨太な演技で、どんな役も似合ってる気がします。

そして中村さんの姫鬼も可愛くて可愛くて👍✨
思わず周囲からも「可愛い💕」の声が漏れるほど(笑)

ただ、とても面白い演目ですが、眷属の鬼の皆さんは面を付けて同じ格好をしてるので、どれが誰だか分かり辛いのが残念なところ(判別できなかった😅

来月は萬斎さんver.で「首引」を観る予定があるので、萬斎さんの親鬼も凄い楽しみ!😁

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

▼前回の野村狂言座はコチラ

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