角がある女、角を出す男【能楽観賞日記】#74
能を知る会 横浜公演
横浜能楽堂
2023年8月9日(水) 14:00開演
この日は立秋の翌日でしたが、まだまだ厳しい暑さが続いておりました。
てか、まだ8月だしw
横浜能楽堂といえば心臓破りの紅葉坂ですが(苦笑)特に今年は厳しい暑さだったので、毎回ヒイヒイ言いながら登ってたのが懐かしいです。
今年の『能を知る会 横浜公演』の演目は「紅葉狩」でした。
お外は全然、秋って感じじゃなかったけど(苦笑)この日は一足先に秋を感じて参りました🍁
講演「角がある女、角を出す男」 /葛西聖司
今回もユーモアたっぷりに、演目の解説と横浜能楽堂の魅力について話してくださいました☺️
ここの能舞台、風流あるので好きな人多いよね😌
本日の演目は角繋がり。でも「紅葉狩」に出てくる鬼👹は鬼神なので男性の鬼なんですね。前半、女性に化けてるだけで😳
本日の葛西さんの解説で「お能は眠くなるものなんです。何故なら気持ちよくなるから。下手だったら気持ちよくないので、そうはなりませんよ」と、心強いお言葉を頂きました😂
やはり皆さんお上手だから気持ちよくなっちゃうんですよ💦
大事なのは「ここぞというところで、ちょっと姿勢を正して、しっかり瞼を開けること!」だそうです。
あと人間、瞼を閉じると口が開いてくるので「口もしっかり閉じること!」だそうです😂
狂言「蝸牛」
太郎冠者:野村萬斎
山伏:内藤連
主:深田博治
後見:中村修一
【あらすじ】主人(演:深田博治)から長寿の薬として蝸牛(=🐌)をとってこいと命じられた太郎冠者(演:野村萬斎)だったが、そのカタツムリを見たことがないので、藪の中で寝ていた山伏(演:内藤連)をカタツムリかと思って尋ねる。そこで山伏は無知な太郎冠者をからかってやろうと、自身がカタツムリだといい、その特徴を見せて信じさせてしまう。一方、主人は太郎冠者の帰りが遅いので、自ら迎えに来てみると、両者の戯れを目撃して驚く。太郎冠者に「あれは🐌ではなく山伏だ」と教えるが、最後は主人までも引き込まれ、ともに浮かれながら帰って行く(※)
※本来は大蔵流の筋で、和泉流では通常、正気づいた太郎冠者と主人を山伏が打ち倒して逃げていくという終わり方になっている。
*・*・*
萬斎さんの太郎冠者で観るのは今回で3度目。
だけどアドは毎回違って、今回は内藤さん。
彼の山伏姿(カタツムリ色)もなかなか良かったです。
内藤さん、素で笑ってんじゃないかってくらい、楽しそうな表情で萬斎冠者をからかっておりました(笑)でんでん、むっしむしー♪で座ってこっち振り向いたときが可愛くて、それは反則だと思いました(笑)そして、二人してニヤリとしながら囃し立てる姿を見て、凄い意気投合してる🤭💕と思いました(笑)
一方、何度観ても、勘違いしちゃう萬斎冠者は可愛いし、体幹素晴らしいし、囃し立てるところは、めっちゃ良いお声でした。耳がうっとりしてしまいました😌
でも、そろそろ萬斎さんの山伏役も観てみたいな〜と、思ったり(なかなか御縁がなくて😅)
ただ、内藤さん、後半ちょっとだけ息が上がってたので😅、そうだよなー、この山伏の役、動き激しいもんなァと。てか、太郎冠者を騙すのに、こんなに一生懸命カタツムリを演じてる山伏も、なかなかお茶目だなァと思ったり。
この演目を初めて観たのは、大蔵流で山伏は茂山千五郎さんでしたが、太郎冠者をからかってやろうというオーラが凄かったんだよね。それをちょっと思い出したわ。
ラストは和泉流の本来の終わり方とは違い、主人も巻き込んで、みんなで囃し立てながら幕の中へ。今回は平和的に終わりました😌
あ、あと萬斎さんの朝顔の肩衣が素敵でした。
先日も朝顔の扇を使ってたような気がする。旬ですね。
(そして何となく子供の頃の夏休みを思い出すw)
そうそう、カンタ先生の質疑応答の時に話してたんだけど、足を上げてガニ股風に歩くのは和泉流の山伏だけで、大蔵流とお能の山伏は普通に歩くとのこと。ただ大蔵流の山伏は、幕の中で2回だけ大きく足踏してから、すり足で幕の外へ出ていくのだそう。これは初めて知ったわ。
能「紅葉狩」
女/鬼神:中森健之介
侍女:奥川恒成、石井寛人、金子仁智翔
平維茂:殿田謙吉
従者:大日方寛
勢子:則久英志、御厨誠吾
共女:高野和憲
末社ノ神:中村修一
笛:竹市学
小鼓:田邊恭資
大鼓:大倉慶乃助
太鼓:小寺真佐人
後見:奥川恒治、永島充、桑田貴志
地謡:観世喜正、中森貫太、遠藤喜久、鈴木啓吾、小島英明、柴田孝宏
【あらすじ】女性に化けた鬼神(シテ/中森健之介)が、鹿狩りに来た平維茂(ワキ/殿田謙吉)を誘惑し、酔いつぶれた所を倒そうとするが、八幡宮の使いの神(アイ/中村修一)が平維茂の夢の中に現れ、宝剣を託し、目を覚まさせる。鬼神は正体を現し襲いかかるが、宝剣を手にした平維茂に倒される。
*・*・*
健之介さんのお父上、カンタ先生は地謡でのご参加でした。
ちなみに健之介さんが、この演目をやるのは今回が初めてだそうです。
初見でしたが、ストーリーがしっかりあって、なかなか面白い演目でした。紅葉の山の作り物(大道具)もありましたが、前シテとツレたち(そして高野さん)が紅葉🍁をイメージする彩りの装束で、一足先に能舞台には秋を感じることが出来ました☺️
健之介さん、お父様よりも身体が大きいので、出てきた時にツレと比較してデカイ😳と思っちゃったんだけど(一瞬、私の目がおかしいのかと思った😂)、お父様譲りの美声で、高貴な美女感が凄い出ておりました。声も舞も美しくて、ちょっとうっとりしました☺️✨
しかし宴は怪しげな雰囲気に。最初は中之舞でゆっくり優雅に舞っていた前シテですが、平維茂が眠りに落ちたのを確認すると、急之舞という激しいテンポの舞になり、その本性を現した瞬間、ゾクッとしました😳💦
その後、シテは山の作り物の中で着替えるのですが、この時、テキパキと着替えを手伝う後見の素晴らしさに感心しつつ見ておりましたが、何気に作り物が結構激しく動いておりまして😂、ガタンとズレそうになったり結構危うい感じに💦
これは地謡座から見ていたカンタ先生もソワソワしたのでは?😂
質疑応答の時にカンタ先生が言っておりましたが、これは本来は作り物を動かさずに静かに上手く着替えねばならないので「多分、今頃楽屋に戻って怒られてると思います」と😂
でも身体が大きいから仕方ないよね、と思いつつも、それも踏まえて上手く着替えねばならないのだと。
人間って常に進化してるからサ、歌舞伎役者も顔が小さいと欠点だと言われたり、能楽師も身体がデカいと能舞台が狭くなっちゃうし、その辺の兼ね合いも大変だな、と思ったり。
だけど、後シテの鬼神は、字幕によると3メートルらしいので😂、凄いハマり役のように思いました。身体が大きいから、とても迫力のあるカッコいい鬼神でした👏👏👏
一方、ワキの平維茂もカッコ良くて、バトルシーンは見応えがありました。ワキや狂言方も活躍するお能は、なかなか見応えがあるので好きです☺️✨
最後は平維茂が勝利して終わります。通常はシテ→ワキの順に退場するのに、今回は勝利したワキ→シテの順に退場するのも興味深かったです。主役(悪)が完全にやられて終わるのは、お能ならではかもですね。歌舞伎は主役が悪人でもご贔屓さんに納得してもらえるような終わり方しますから(笑)
*・*・*
●カンタ先生の質疑応答
Q「狂言と違って、お能の言葉が聞き取れないのですが、昔の人はコレを聞き取れて居たんでしょうか?」
A「…多分」
😂😂😂
というのも、室町〜江戸時代までは、お能は神社やお寺のCMを兼ねた演劇で大衆が観るものだった。今回の「紅葉狩」も、ワキが八幡宮にお参りしてたから助けて貰えたんだよ、だから皆もお参りしようね、というメッセージがある。
だけど、江戸時代に幕府お抱えになってからは武士の教養として扱われるようになり、お殿様も演じることがあるので、脚本は簡略化され、お能は分かる人が観るもの、になってしまったと。
それが現代まで続いてしまっていると。
でも、だからといって、言葉等を現代の仕様に合わせてしまうと、それはお能では無くなってしまうので、字幕を付けたり、イヤホンガイド等で対応してる。
ちなみに、謡を習えば聴き取れるようになりますので、よろしければ是非、とのことです😂
Q「シテを観ていたら手が綺麗だなと感じたんですが、何かにケアなどされてますか?」
A「特別なことはしてないけど、手荒れには気を付けてる。あとゴルフが好きなので日焼けには気を付けてる」
😂😂😂
確かに、萬斎さんだけでなく、健之介さんもカンタ先生も手が綺麗だなと思った(まぁ健之介さんは若いからねぇ。でもカンタ先生も年齢を考えるとマジで綺麗だった)。
能楽師は常に型が基本で、指先まで神経を尖らせてるので、シワになりにくいのでは?とのことでした。
ちなみに、能楽師は実年齢よりも若く見える人が多いです、とのこと(確かに!)
Q「お能の前に狂言がありましたけど、それは何でですか?」
A「能と狂言を合わせて能楽といい、能と狂言の演目で構成されたものを番組と呼びます。基本的には、能と狂言はセットで観るものなんです」
昔は夜明けから日が沈むまで、能と狂言を交互に上演してたが、現代においてそんな長時間公演は出来ないので、能と狂言一曲ずつのような公演スタイルが出来た。以前は、互いの収益を守るために、能を上演する時は必ず狂言を入れなきゃいけないとか、細かなルールがあったが、今は、狂言の方が人気があるので、狂言のみの会とか、お能のみの会もやって良いことになったらしい。
▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ