第20回 一樹会【能楽観賞日記】#61

第20回 一樹会
国立能楽堂
2023年5月14日(日)

5月ラストの能楽鑑賞は『一樹会』でした。演目は、野村万作・萬斎・裕基の親子三代による狂言「佐渡狐」と、青木一郎・健一・響平の親子三代による能「花筐 筐之伝」他、舞囃子・連吟・仕舞ありのボリューム満点な会でした。

●第一部 ワークショップ公演 能楽塾ぷらす

まず先に、体験希望者によるワークショップがあり、体験以外の観客も自席から見学出来るので、見学させて頂きました。

前半は大鼓・小鼓のワークショップ。
講師は、小鼓方の曽和伊喜夫師と、大鼓方の大倉栄太郎師。

先に五人囃子と各楽器の素材について説明あり。

五人囃子、正しく並べられますか?
ということで、正しい順番は、上手(右)から地謡→笛→小鼓→大鼓→太鼓と、音を奏でる場所が口から順に離れていくのが正解です。

もう覚えましたね?(笑)

小鼓の素材は、仔馬の革と胴は桜の木。
湿気を好み、革が柔らかい為、力加減が重要。
だから皆さん、ふわっとした叩き方してるのかァと納得🤔

大鼓の素材は、逆に年老いた馬の革と胴は同じく桜の木。
こちらは乾燥を好み、革も丈夫。
中に鉄の輪っかが入ってるので、打つときに親指を当てないようにすると、怪我(痣)をせずに済むらしい。

大鼓は、打つ時は正面を向き、腕を横に広げて打つ。
正しい型を身に着けることによって、鼓を直接見なくても打てるようになる、とのこと。

掛け声は指揮者の代わり。
声の強弱で、次に奏でる音の強弱を囃子方同士で確認し合ってる。

体験の方達は、講師の先生が「いきなり良い音出されちゃうと、自分たちの立場がなくなっちゃう(笑)」と言うほど、上手く出来てて良かったと思います。能楽堂の裏側も知れて羨ましいなァと思うと同時に、人前に出るのは、ちょっと恥ずかしいので無理だなと思ったり(苦笑)。でもお囃子のワークショップは楽しそうだな、と思った。

後半は、能「安達原」の一場面を使って、シテ(鬼女)とワキ(山伏)を体験するというもの。

講師はシテ方の青木健一師と、ワキ方の村瀬慧師。

鬼女と山伏のせめぎ合いを再現。
体験の方達へのレクチャーを終えると、今度は観客に向けて、青木健一師と村瀬慧師が、その場面を実演してくれました。
これは、お囃子方も居るので本番と全く一緒。
御二方ともカッコ良かったし、なんか得した気分でした。

●第二部 本公演

解説は、能楽を研究されてる大学教授の三浦裕子さん。
解説だけで30分も時間が取ってあったので😂、皆さんが観能前に疲れないようにと、ユーモアを交えながら、青木家の歴史と各演目について説明。

以下は、狂言「佐渡狐」についての解説。

江戸時代に作られた演目のようで、比較的新しい狂言とのこと。
賄賂ネタなど(苦笑)現代人にも身近に感じられるのは、その為か?😂
地位や金銭など利益になるものについて賭けるのではなく、キツネ🦊を対象にしてるのが狂言らしく、可愛らしい。

最後に出てくる、鶯の鳴き声は「ホーホケキョ」だが、これは法華経から来ている。
しかし狂言では「ツキホシヒ」と表現する。
漢字で書くと「月星日」
昔の人は、鶯の美しい鳴き声を、美しいもので表現していたのではないだろうか、というお話でした。

ちなみに大蔵流だと「東天紅(トウテンコウ)」
某レストランの名前にもなってますが(笑)、これも、東から日が昇る頃に鶏が鳴くから、それを表現しているのでは、とのこと。

連吟「船弁慶」

平知盛の亡霊:梅若万三郎
   源義経:青木響平
 武蔵坊弁慶:青木一郎
 義経の従者:青木健一

*・*・*

師匠である梅若万三郎師と響平くんの初共演。
今回はワキの科白もシテ方である一郎師と健一師が務める。

「そのとき 義経 少しも騒がず」

響平くん、今年誕生日来たら5歳になるって言ってたかな。
一生懸命、練習したのでしょう。
とっっても可愛かったです。

…が、やはりまだ幼いので待ち時間は退屈なようで、大きなあくびを2度ほど(笑)
観客は皆「☺️」な顔して、ほっこりした気持ちで観ていたことでしょう。

狂言「佐渡狐」

   奏者:野村万作
佐渡の百姓:野村萬斎
越後の百姓:野村裕基
   後見:高野和憲

*・*・*

この演目を観るのは4度目なので、あらすじは割愛。

んで、この配役で観るのは2度目ですが、まさに適材適所。
ゴールデン・トリオ👏👏👏

佐渡に狐が居ると見栄を張り、更に賄賂を贈って奏者を味方につけようとするキャラクターは萬斎さんの芸風にピッタリ🤣
今回も巧みな話術で観客の笑いを誘っておりました🤭

一方、佐渡の百姓の嘘を暴こうと必死になる越後の百姓役も、裕基くんに合ってると思います。
今回は更に板に付いてきたようで、ずっと、しかめっ面で萬斎さんに向かって攻め入る姿が素晴らしかった👏

てか、しかめっ面な裕基くんが貴重な気がした🤣
前日に観たニコニコな聟役との対比が凄い🤣

そして何より、この演目で一番チャーミングなのは、奏者の万作さん!👏👏👏
賄賂をやり取りするシーンは、何度見ても笑ってしまう🤣🤣🤣

更に前にも言ったかもしれないけど、萬斎さんが🦊の容姿についてトンチンカンな回答をする度に、万作さんがアチャー!😫って顔するのが、面白可笑しくて🤣🤣🤣

この配役なら、何度でも観たい演目です。

能「花筐」筐之伝 

照日ノ前:青木一郎
   王:青木響平(初子方)
  侍女:青木健一
  官人:福王和幸
  使者:村瀬慧
  輿舁:村瀬提
  輿舁:矢野昌平

 笛:一噌庸二
小鼓:曾和正博
大鼓:大倉正之助

地頭:梅若紀彰

【あらすじ】応神天皇の子孫である大迹部皇子(子方)は、武烈天皇より皇位を譲られ、継体天皇として即位された。帝は、寵愛していた照日の前(シテ)に使者(ワキツレ)を送り、手紙と愛用した花筐(花籠のこと)を届ける。出先で使者を迎えた照日の前は、天皇の即位を喜びながらも、突然の別れに、寂しく悲しい気持ちを抑えられず、手紙と花籠を抱いて自分の里に帰って行く。ある秋の日、帝は官人(ワキ)らを引き連れて紅葉見物に行くと、そこへ狂女となって故郷を飛び出してきた照日の前と花籠を持った侍女(ツレ)が現れ…。

*・*・*

響平くん、子方デビューの巻。
てか「船弁慶」だけでも大変だったろうに💦

継体天皇の役で、基本的に鬘桶に座ってるだけ(小さい鬘桶を初めて見た)なので、本人は睡魔に襲われてしまい(ま、大人だって睡魔に襲われるンだから仕方ないよな😅)ウトウト😴…ハッ!😳…を何度も繰り返しておりました。
その小さな体で本人は一生懸命起きようとしたんだと思います(分かるぞ、その気持ち😂)。

しかし、とうとう勝てなくなってしまったようで、完全に船を漕ぎ始めてしまった…😅

流石に体制的にヤバくないかな…と思ったら、予感が的中。
鬘桶から転げ落ちてしまいました😱💦
地謡の人が直ぐに助けたので事なきを得たけど、地謡座の柵が無かったら、舞台下まで転げ落ちちゃってたかもしれない💦

(そういえば昔、某狂言方の子猿が舞台から落ちちゃったことがあるって聞いたなァ)

ちょっとヒヤッとした場面もありましたけど、それ以外は皆さん「可愛いなァ☺️」って気持ちで、ほっこりしながら見守ってたと思います。今はまだ何しても許される年齢だと思うので。

ただ、あと1〜2年もすれば、子方でも大人同様の演技が求められるんですよね。
本当の意味でお客さんの心を掴む為にも、今後も頑張って欲しいですね😌

んで内面ハラハラしていたのではないかと思われる😅、お祖父様の一郎さんと、お父様の健一さん。
今回初めて拝見しましたけど、お二人で謡ってるところは、何か共鳴し合ってるかのようなハモりが感じられ、とても良かったです。

後シテでは、紅葉の羽織を着てましたけど、ホントに紅葉が舞い散るかのような舞でした。

一方、ツレの健一さんは体幹がしっかりしてるのか、ブレないし、所作がキレイだと思いました。素晴らしかったです。

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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