山本東次郎家のお狂言を観てきました【能楽観賞日記】#35

勝手に決めました、毎月第2日曜日は狂言の日

横浜能楽堂 普及公演「横浜狂言堂」
2022年12月11日(日) 14:00 開演

横浜能楽堂では毎月第2日曜日に、お手ごろ価格の2,200円✨で、狂言2曲を解説付きで楽しめる普及公演を行っております。

ということで、4ヶ月ぶりに横浜狂言堂へ。
今月の担当は山本東次郎家(大蔵流)です。

てか、人間国宝の山本東次郎先生のお話付きで2,200円って破格過ぎませんか!?👀

推しの萬斎さんはこの日、鬼滅の刃の公演で都内におらんし、何よりいろんなお家の狂言も観たいしネってことで行くことに。萬斎さんを追いかけてると、いろんな流派のシテ方の人には出会えても、狂言は自然と万作家固定になってしまい、他のお家の狂言は自発的に観に行かないと見れないので、「横浜狂言堂」みたいな公演は凄くありがたい🙏

だけど、再来年から横浜能楽堂は改修工事のために二年間休館してしまうんですね。当然、その間は「横浜狂言堂」は無いでしょうし、復帰後も同じ企画をやってくれるとは限らないので…。とりあえず来年が最後ってことになるんでしょうかね。。。

今回の演目。
東次郎先生のお話って最後にやるんだ!?と、ちょっとビックリ。
こんなパターンもあるのか。👀

さらに演者変更のお知らせが😭
先月の「銀座余情」の時に拝見した泰太郎さんが体調不良で欠席とのこと😭

泰太郎さんの硬派な芸風、また観たかったのですが残念。
お大事になさってください。

ちなみに本日のお座席は中正面3列目。
脇正面寄りですが、結構、観やすかったです。

狂言「賽の目」(大蔵流)

    聟:山本則秀
    舅:山本東次郎
 太郎冠者:若松隆
そら聟・甲:山本凜太郎
そら聟・乙:山本則孝
    女:山本則重
   後見:山本修三郎

【あらすじ】美人の娘を持ったと自負した、金持ちの父親(演:山本東次郎)が、計算に優れた者を娘の聟にしたいと、高札を打って聟を募る。早速、一人目の候補者(演:山本凜太郎)が現れるが、舅が「五百具(一具=サイコロ2個のこと)の賽の目の数はいくつか?」との問いに、候補者は正解が分からず追い出されてしまう。二人目の候補者(演:山本則孝)にも同じ質問をするが、そろばんがないと解けないと答え、同じく追い出されてしまう。そこへ、計算の名人(演:山本則秀)が聟の候補に名乗りを上げ、舅が同じ質問をすると見事正解し、聟に決まる。聟は喜んで、美人と噂される娘(演:山本則重)と対面するのだが…。

*・*・*

まぁ、噂の美人というフラグが立ってる時点で、どんな結末かは大体想像付くでしょう。

・・・。

・・・。

そう、娘は美人じゃなかった訳ですね(苦笑)。

聟が娘を見た時のリアクションが、吉本新喜劇ばりのズッコケっぷりで、思わず吹き出してしまった🤣🤣🤣芸風は凄く古風で硬派なのに、こんな派手なリアクションするんですね🤣🤣🤣

聟は、なんだかんだ理由を付けて、娘から逃げようとするのですが、なかなか離してもらえず、最終的には「お前みたいなブサイクと一緒に暮らせるか!!(意訳)」と、相手を突き飛ばして逃げていきます。娘も「その男を捕まえてくれ」とめげずに追いかけていくのですが、ここはちょっと、いくらなんでも娘が可哀想だなと同情してしまいました(苦笑)。

しかし、後の東次郎さんの解説では、これは「夫婦というものは、何年か一緒に暮らしてると嫌な部分が見えてくるという例えを表してるのではないか」という東次郎さんなりの解釈を教えて頂き、目から鱗でした。狂言では「あれから◯年後…」みたいな表現はできないので、こう極端な形になってるのではないかと。

流石、人間国宝といいますか、その狂言の本質はどこにあるのか、ちゃんと見抜いてるわけですね。また、ひとつ、狂言の奥深さを感じるお話でした。あと演目を観た後に解説してもらうってのも、なかなか良きですね。あれはどういう意味だったんだろう?って部分の答え合わせをすることで、より内容を理解できるというか。

候補者二人が質問に答えられなかったのも、決して頭が悪かったわけではなく、急な質問に戸惑って慌ててしまった表れなのだと言ってましたね。ま、確かに一個の賽の目の数を覚えていれば答えられる質問ですからね。

ちなみに、この「賽の目」は、山本家では遠い曲(滅多にやらない)で、今回久しぶりに演じて、皆さんちょっと緊張されてたそうです(笑)。同じ大蔵流の茂山家では廃曲になってるんだけど、山本家では何故か残ってる曲だと言ってたので、もしかして、今日観れたのラッキーだった?と思いました(笑

また、先月の「銀座余情」で、拝見した凜太郎さんと則孝さんが居たので、単独公演でもその空気に入り込みやすかったです。やはり知ってる人が居ると敷居が下がる。凜太郎さんは前回に引き続き、可愛い役どころでした🤭

あと山本家独特の古風な芸風に加えて、役者個人のお色も個性が強いなと思いました。観ていて面白かったです。やっぱりこの芸風、クセになる(笑

狂言「膏薬煉」(大蔵流)

 都の膏薬煉:山本則重
鎌倉の膏薬煉:山本則孝
    後見:若松隆

*・*・*

狂言「膏薬煉」は、以前、鎌倉で萬斎さんver.(和泉流)を観ており、立ち位置や言い回しの違いはあれど、あらすじは同じなので割愛。

ただ、この時は橋掛り側の脇正面で観ていたので(今でもパッと思い出すのが萬斎さんの白くて美しい横顔だ・笑)、次は前の方から観たいです〜ってことで、今回は中正面席を取ったのでした(発売日に買ったんだけど、正面と脇正面は微妙なところしか空いてなかった)。

今回も「吸い比べ」のシーンが面白かったです🤣
演者は結構な運動量で大変だったかとは思いますが🤣

*・*・*

ラストは、山本東次郎先生のお話です。

橋掛りを見事な小走りで駆け抜けてきて(めっちゃ元気!😳)、本舞台で一度正座してご挨拶。あとは立ったまま30分近くお話されてました。

お話の内容は、演目の解説と、本の宣伝と、文化功労者として皇室に行ってきた時のお話でした。時折ユーモアを交えながら話してくれるので、とても面白かったです。

絶版になってた『狂言のことだま』を復刻するにあたって、せっかくなのでと「毎週、新聞にエッセイを書かされた」のも掲載されてますと(書かされたって…笑)。東次郎さんが創作した新作能の台本なども載ってるそうです。

皇室では、子供の頃にも「靱猿」の太郎冠者役で行ったことがあり、その時の思い出話を今の天皇陛下とお話されたそうです。

あとは、横浜狂言堂では、いつも沢山のお客さんが来てくれてありがたいと。でも、再来年には改修工事で、この縁が無くなってしまうのが残念だし、その2年後には元に戻るみたいだけど、私自身もどうなってるか分からないし…とか言ってて、いやいやいや、万作さんも90歳超えで元気なんだから生きてー!と思いました😂

そして、お話の後には、小舞「餅酒」を披露してくださいました!!👀

まさか、人間国宝の小舞まで生で拝見できるとは…毎回やってるんですかね?これで2,200円は安過ぎるゾ、マジで💦

東次郎先生、前日も公演があったため、「疲れてるので、長い舞は危険なんで、短い舞なんですけど」って、いやいやいや、無理しないでー!生きてー!😂

人間国宝の方にこんなこと言うのも失礼かもしれないけど、ユーモアを交えながらも懸命に有意義なお話をしてくれる東次郎先生、ちょっと可愛らしい方だなと好感度上がりました。これは人気公演なのも頷ける。

「横浜狂言堂」も来年が最後なので、また行ける時は極力参加したいなと思います。

▼普及公演「横浜狂言堂」の情報は公式サイトにて
https://yokohama-nohgakudou.org/kyogendo/

▼前回の横浜狂言堂の感想はコチラ

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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