祝!「第100回 野村狂言座」【能楽観賞日記】#34

第100回 野村狂言座
宝生能楽堂
2022年12月2日(金)18:30 開演

野村万作家の定例公演「野村狂言座」に行ってきました。
しかも今回は、記念すべき第100回目!✨✨✨
年4回行われてるので、四半世紀続いたということです。これはめでたい!

今回は木曜も金曜も仕事が休めない日だったので、どうしようかと悩んだのですが、その日の金曜は早朝出勤日だった(その分、早く上がれる)ので、意を決して夜の公演へ。翌日も仕事で正直しんどかったけど、レアな演目が観れるのが野村狂言座ということで、今回も楽しませて頂き、無理してでも行けて良かったです。

まぁ、有給使って昼間の公演観て、翌日仕事するのは全然平気なんだけどね、夜公演で翌日仕事は結構しんどい(苦笑

まずは萬斎さんの解説から。私が春に初めて野村狂言座に行った時も、萬斎さんの解説だったので、ちょっと懐かしくも感じ、その時も今回も脇正面からの鑑賞だったので、袴の横の隙間(“脇あき”というらしい)に目が行ってしまう(笑)。隙間から見えるキラキラと輝く銀色の帯と、綺麗に着付けされた皺のない着物の裾が美しく、またそこから姿勢の良さが伝わってくるので、何だか芸術品のようでずっと観ていたくなるのです(マニアック・笑)

ちなみに今回は脇正面6列目の真ん中寄りのお席。今までは3〜4列目だったので、どうかな?と思ったけど、宝生能楽堂の後ろの座席は傾斜がしっかり付いてたので案外観やすかったです。

萬斎さんの今回の解説は、パンフの演目解説に対する補足説明って感じで。狂言「老武者」の解説では「BL」なんて言葉も出てきたりして(昔は男色が普通にあり盛んだったという時代背景から)。ただ、客層的に新語もしくは昭和ネタは分かる人と分からない人がキッパリ別れてしまうのが悩みどころか😂

自身の基準(昭和世代)をベースに、エゴサ等で知ったのであろう新語を取り入れて、現代人にも分かる様に変換して解説してくれる、萬斎さんのユニークで柔軟性のある解説が好きだなと、久しぶりに聞いて思いました。え?そんな言葉まで知ってるの!?というギャップも含めて😂

そういえば、解説時の時間確認のために、以前は懐中時計を使っていたのですが、今回はダイレクトにスマホのアラームを鳴らしてました(笑)。もう懐中時計スタイルはやめちゃったのかしら?🤔アレはアレで素敵だったのに…。

取り出したスマホを見て、いつもこれで「Radiotalk」を収録してるのかしら?🤔とか、ちょっと想像しちゃったよね(笑)

狂言「飛越」

新発意:中村修一
 何某:内藤連
 後見:月崎晴夫

【あらすじ】知人から茶の湯に誘われた男(演:内藤連)は、恥をかかないようにと、懇意にしている新発意(出家して間もない者/演:中村修一)に同行してもらう。途中、小さな川に行き当たり、男は軽々と飛び越えるも、新発意は怖がってなかなか飛び越えられない。そこで男は、ふたりで手を繋いで飛び越えようと提案し、実践するも、新発意だけが川に落ちてしまい…。

*・*・*

最近よく見ている中村さんと内藤さんの若手コンビ。
なんとなくしっくりする組み合わせ。

男には小さな川に見えていても、新発意には巨大な川に見えているのであろう。もしかしたら、新発意は運動神経が無いのではないか?だとしたら、しっくりくる。私も運動神経が無いので、そのキモチ分かるぞ(笑)

男は、ずぶ濡れになった新発意を心配するどころか大笑い。悔しくなった新発意は、昔、男が小さな力士相手に相撲をとって負けた話を持ち出し、相撲で決着を付けることに。そして、相撲勝負に勝った新発意が、勝ち逃げしていくというお話でした。

狂言「簸屑」

太郎冠者:高野和憲
   主:飯田豪
次郎冠者:深田博治
  後見:岡聡史

【あらすじ】主人(演:飯田豪)から、出かけてる間に簸屑を挽いておくようにと命じられた太郎冠者(演:高野和憲)。しかし、いやいや作業する太郎冠者は、次第に睡魔に襲われて居眠りを始めてしまう。使いから帰ってきた次郎冠者(演:深田博治)は、太郎冠者を起こして、眠気を覚ましてやろうと懸命にあれこれするのだが、結局、太郎冠者は横になってぐっすりと眠ってしまう。その態度に怒った次郎冠者は、太郎冠者に鬼の面をこっそりと被せ…。

*・*・*

こちらは、高野さんと深田さんの安定の中堅コンビ(好き
高野さんが太郎冠者の怠けぶりを見事に演じてて良きでした(笑

一方、太郎冠者の眠気を覚ましてやろうと舞を舞う深田さんが、またカッコ良くて見惚れてしまいました。飯田さんも若手ながら貫禄があるので、主人役がハマってましたね。

鬼の面を被せられた太郎冠者。狂言の世界では、面を付けたらその姿に変身するという意味があるので(萬斎さんの解説より)、主人は帰宅したら鬼が居るのでビックリするわけです(笑

家に鬼が居るなんてとんでもない!と、早く出て行け!と追い出されそうになる太郎冠者は、自分が鬼の姿になってしまったことが分かるとエンエン泣きだすのですが、それがまた可愛いかったです(流石、高野さんw

ラストは次郎冠者と太郎冠者が相撲をとっているうちに面が外れて、真相を知ることになるのですが、実はこの相撲のくだりが、1曲目の「飛越」と丸かぶりしていたということで(選曲ミス・笑)、今回は丸々カットし、自然な流れで取っ組み合ってるうちに面が外れるという形になっていました。

ちょっとキツめの灸を据えられた太郎冠者。
自業自得とはいえ、ちょっと可哀想だったかも?😂
なかなか面白い演目でした。

狂言「鱸庖丁」

伯父:野村万作
 甥:野村裕基
後見:中村修一

【あらすじ】依頼されていた鯉を買うことを忘れ、カワウソに食べられたと嘘をいう甥(演:野村裕基)への仕返しに、伯父(演:野村万作)も、鱸を食べさせると言って料理法を長々と述べた後、結局何も出さずに追い返す。

*・*・*

伯父を丸め込めるだろうと高をくくっていた甥だったが、実際は伯父の方が一枚上手だったという話(笑)。万作さんの話術と、包丁さばきの仕草が美しい狂言でした。てか、殆ど、万作さんが喋ってたので、年齢的にもその凄さに圧倒されてしまった。。。

素囃子「早笛」

大鼓:小野寺竜一
小鼓:森貴史
 笛:佃良太郎
太鼓:大川典良

*・*・*

能で、竜神や鬼畜などが勢いよく登場するとき奏される曲ということで、舞台上には囃子方しかいないのだけれど、普段からお能も観てるせいか、自然とシテ方が舞う姿が思い浮かんできました。たまには、素囃子も良きですね😌

狂言「老武者」

祖父:石田幸雄
三位:野村萬斎
稚児:三藤なつ葉
宿屋:石田淡朗
若衆:野村太一郎・内藤連・岡聡史
祖父:月崎晴夫・高野和憲・竹山悠樹・深田博治

地謡:飯田豪・中村修一・野村裕基・福田成生
後見:野村万作

【あらすじ】美しい稚児(演:三藤なつ葉)のお供で、曽我の里から鎌倉見物に出かけた三位(演:野村萬斎)は、藤沢の宿に泊まることにする。そこへ、それを聞きつけた近所の若者たち(演:野村太一郎・内藤連・岡聡史)が、美しい稚児からお盃をいただきたいと宿に押しかけてきて、楽しい酒宴が始まる。遅れて、それを聞きつけた祖父(おおじ/演:石田幸雄)が、自分も美しい稚児からお盃をいただきたいと宿にやってくるのだが、年寄りは帰れと宿屋(演:石田淡朗)に閉め出されてしまう。怒った祖父は、他の祖父たち(演:月崎晴夫・高野和憲・竹山悠樹・深田博治)を集めて、宿を襲撃しにやってくるのだが…。

*・*・*

大人数もので、過去にも何度か演ってるそうなのですが、他家の力を借りず、万作家だけで演じるのは今回が初めてということで、それだけお弟子さんが増えたってことなんですよね。万作さんを筆頭に、中堅、若手、そして子方も居る。今の万作家ってバランスが良くて、凄く脂が乗ってる状態なのかもしれませんね。

囃子方がそのまま残り、演目の始まりと、若衆と祖父のバトルシーン(笑)は、演出がお能チックになってて、面白かったですし、それが理解できるのも、普段からお能も一緒に観てたからなので、観てて良かったな、と。特に若衆と祖父の対決シーンは、狂言方だけでお能やってみたらこうなりました!的な感じがして面白かったです(笑)。シテの幸雄さんが良い味出してた〜!

今回は、なつ葉ちゃんがひたすら、天真爛漫に振舞ってたので、凄く可愛かったです。本当にイキイキと演じてて、舞台に立つのが好きなんだなと感じました。

あと、淡朗さんのしれっとした宿屋さんも良かった(笑

そして、91歳の万作さんが後見として、小道具の出し入れなど、しっかりと働いてる姿が、これはこれで貴重で凄かったような気がします💦お元気でホントに何よりです😌

ラストは、推しはみんなのもの!(←これ重要)ということで、大円団で終わります。萬斎さん演じる三位が、稚児をシテの祖父に送り出すところと、祖父が嬉しそうに頬ずりするシーンが印象的でした。祖父たちは皆、面をしていましたが、最後は笑ってるように見えましたね。

*・*・*

四半世紀続いた「野村狂言座」。私は今年の春からの参加でしたが、1月の公演が延期になった関係で、何だかんだで今年の4回は全部観ることができました。勤め人なので、来年はどうなるか分からないけど、レアな演目を観れるのが魅力なので、来年以降も極力、観に行きたいと思っています。お値段も他の通常公演に比べるとお安いし、それで4曲も観れるのでコスパも良いしね(笑

和泉流の現行曲254曲のうち、200曲くらいはやったらしいので、ここまで来たら全曲制覇してほしいですし、私は新参者なので、過去にやったレアな演目もまたやってほしいですね。

ということで、次の四半世紀も期待しております(てか、25年後ってワタシいくつ?w

▼前回の野村狂言座の感想はコチラ

▼前回の能楽鑑賞日記はコチラ

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