武士道と邪道【Ghost of Tsushima クリア後感想】#後編

※このゲームは、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。

今回は登場人物ひとりひとりに沿って感想を書きたいと思います。
各キャラクターの設定や物語も濃厚でネタバレ無しで語るのは難しいので、ネタバレありで語らせてもらいます。

ちなみにこのゲーム、他の洋ゲー同様、キャラクターは実在するアジア系の俳優がモデルと英語版の声優を務めてます。主人公の境井仁を演じたのは、日系アメリカ人のダイスケ・ツジ氏。本人曰く、入浴時にみられるオシリも本人そっくりだそうで(笑

日本の他社ゲームにあるような二次元的な美男美女は出てこないので、PVを見ていた時はキャラの地味さに正直、大丈夫か?と思っていたのですが、各キャラクターのバックボーンはしっかり作られており、サブストーリーも同時に熟すことで、気づけばどのキャラクターも個性があって好きになっていました。

※以下、重大なネタバレ注意!

●境井 仁

本作の主人公。あらすじに“冥府から蘇った者「冥人」”とあるが、あくまでも普通の人間であり、誇り高き侍。伯父であり、師でもある地頭・志村の教えに背くことに葛藤しながらも、対馬の希望「冥人」としてモンゴル軍と戦う決意をする、というのが本作のシナリオ。

命の恩人である野盗の“ゆな”に導かれるまま、冥人としての道を歩むことになるが、最初は冥人として扱われることを嫌がっていた。しかし、ゆなの弟である“たか”が目の前で殺されたことで、仁(=プレイヤー)の中で完全に冥人としてのスイッチが入ったように思えた。

そして、志村城での伯父上との決別に繋がっていくのだが、やはり最後に頼りになるのは身内。伯父上に援軍の協力を求める手紙を送った時は、おいおい甘ちゃんだなと思ったものの、早くに両親を失った仁にとって、伯父上だけがたった一人の身内なんだと実感した(実際に援軍に来てくれた時も嬉しそうにしてたし)。

なのでラストの伯父上に対する選択肢(殺すか生かすか)は少々悩んでしまった。終始、武士として誉を貫いた志村殿の望み通り、誉ある死を与えるのも一種の優しさなのかもしれないと思ったからだ。でも、仁は今回の戦で沢山のものを失っており、これ以上、仁に重いものを背負わせないでくれよという気持ちが勝ったため、唯一の肉親である伯父上を生かすことにした。

「誉を失くしても 我が父だけは斬れません」

まさにこれが、仁の本心だと思った。

ちなみに仁は、自身の誉は浜で死んだと作中で言っていたが、元々、仁の誉は「民を救うこと」であり、終始そこはブレていない。そういう意味では、己を犠牲にしてでも民を救った仁もまた、立派な“武士(モノノフ)”だったのではなかろうか?

結局、対馬は救えたものの、仁は約束されてた地位までも失ってしまい、個人的には切なさが残るエンディングとなったが、沢山の血が流れた結果であり、その切なさが日本の時代物っぽくて良いと思った。

●ゆな

女野盗で仁の命の恩人。
登場早々、素晴らしい女優魂を見せつけてくれる(笑)。
敵に囚われた弟のたかを助けるため、仁と行動を共にする。

命の恩人であると同時に、女性でありながらも強く度胸もあることから、仁からの信頼は熱いのだが、ゆなにとっては、最初は自身の目的のため行動を共にしてる感が強かった。しかし、皮肉にもたかを失ったことで仁とゆなの相棒感は確実なものになったと思う。間違いなく今作のヒロインであり相棒。エンディング後も良いコンビで居てほしい。

●たか

ゆなの弟で腕利きの鍛冶屋。

最初の印象は、冥人の戦い方にドン引きするような非力で優男だった。だが行動を共にするうちに彼は仁に憧れ、協力するようになり可愛い弟分のような存在に。しかし、そんな彼の優しさと勇気が残酷な運命に導いてしまう。

この時だけロード画面がこれになる演出がニクい。

ハーンに首を切られた時は、これは仁が悪い夢でも見てるんじゃないかと思ったが、夢じゃないと分かった時には、もうたかに会えない悲しさと、ハーンに対する憎しみと、何よりも弟を溺愛するゆなに何て言えばいいのか、何て詫びれば良いのか分からず複雑な気持ちに。まさにプレイヤーも完全なる冥人になった瞬間だった。

でも悲しいだけじゃない。仁を助けるためハーンに立ち向かった時の彼は、作中一番カッコよかった。誰よりも彼は“武士(モノノフ)”だった。彼が残してくれた鎧はもちろん、序盤に作ってくれた鉤縄も今となっては大事な形見となった。

ハーンにトドメを刺した時もこの鎧で。
その時はまさに、たかと共に対馬を救った瞬間であった。

●典雄

唯一生き残った僧兵。仁と境遇が似ており少々未熟なところがあるものの、他のキャラに比べるとまともな部類に入る。

…筈だったのだが、彼の物語では最後の最後に復讐の鬼と化してしまった。大切なものを奪われた人間は皆、こうなってしまうのだろうか…。仁も武士であることを捨て冥人になった訳だが、仁の場合は対馬の民のためという誉がまだ残ってるので、ここが典雄と仁の違うところだと思う。

●安達 政子

安達家の女武芸者。
一族を皆殺しにされ復讐に燃えるバーサーカー。

年配である政子殿だけが生き残り、自分より若い息子の嫁たちや孫に先に死なれるのは、まさに生き地獄のようなものでとても辛いことだと察する。…のだが、感情的で毎回、口を割らせる前に相手を殺しちゃうので捜査が難航する(苦笑)。にしても、このゲームに出てくるおなごは年齢問わず皆強い。。。

一族を皆殺しにした黒幕は実の姉ということで意外な人物だったのだが、政子自身の強さと優しさが逆恨みの原因を作ってしまっていたため、何とも複雑な気持ちに…。

●石川先生

少々性格に難ありの弓の名手。
弟子である巴に裏切られ、仁と共に巴の行方を追うことになるのだが…。

典雄と政子の物語の結末は復讐を達成して終えてるのに対し、こちらは最終的に巴を見逃すという結末が(先生の性格的にw)意外だった。巴も仁の言葉を聞いて動揺してたところがあったので、先生の本心が伝わっていなかっただけで(まぁ、あの性格じゃ無理があるw)、改心する余地はまだ残ってるのかなァと。

先生の「家族を持てばよかった」の一言は、独身である私のココロにチクリと刺さった(苦笑

なんだかんだで一番印象に残るサブキャラ&サブクエストだったかもしれない。

●竜三

仁の幼馴染の牢人で菅笠衆のリーダー。

仁は竜三のことを良き友人と思っていたようだが、竜三は仁に対してコンプレックスを抱いていたため、仁に対して素直になれず、結果的に裏切ってしまう。龍が如くで言えば桐生と錦、DQ11で言えばグレイグとホメロスのような関係である。桐生さんもグレイグも仁も、親友が抱いてるコンプレックスに全く気づいていないのである(苦笑)。友情って難しいなァと思ったが、竜三が散々悪事を働いた後に調子よく再び仲間に加わろうとしたので、流石にそれは虫が良すぎるだろってことで、私的には成敗する気持ちに躊躇はなかった。

…が、仁的には竜三を斬るのはとても辛かったと思う。直後の仁の仕草や表情でそれを察した。

●酒売りの堅二

ゆなの友人。ダメ人間かと思いきや、実は今作一番の癒し系キャラだったという(笑)。辛い出来事があった直後に、クスッと笑わせてくれたり、仁のことを助けてくれたりと、嫌いになるどころか物語が進むにつれ好きになるキャラクター。

●百合

仁の乳母。再会した時は認知症が進んでいるようで、仁と仁の父親を混同しているのだが、そのお陰で仁の父親がどういう人物だったのか少し知ることができた。父は志村のことをかなりの堅物だと思っていたようで、仁と父親は親子なだけに考え方が似たようなところがあるのかもしれないと感じた。

既に百合の死期が近くなっており、最後は仁の隣で眠るように亡くなる。血生臭い中で亡くなるキャラクターが多い中、静かに穏やかに、天寿を全うした百合の死はとても印象的だった。

●志村

対馬の地頭であり、仁の伯父。
声の効果もあり、とてもカッコいい人物だが、序盤はピーチ姫ポジションになっている(爆

どんな時でも武士として、地頭として、誰よりも誉を優先するので、時と場合によってはホマハラ(誉ハラスメント)が酷いと感じる時もあるかもしれない(苦笑)。確かに誉を守ってこそ武士であり、民を導く者としての姿なのだが、侍同士の戦ならともかく文化の違う異国との戦では、それは通用しない。民を導く前に対馬がなくなっちゃうよ…、伯父上…。

ということで、仁が武士らしくない戦いをして最初は怒られると思ったが、志村救出時は自分を助けるためだと理解してくれたので、流石、地頭!人格者!仁の憧れの人!カッコいい!と思ったのだが…。

しかし、後の共闘時には、冥人の非道っぷりを目の当たりにしてホマハラ発動。鎌倉からの援軍の目もあったせいか、志村自身の誉はどこへやら、全ての所業はゆなに誑かされたからってことにしろって言われた時には、伯父上、いくらなんでもそりゃないよ、と思った。仁を何が何でも跡取りにしたいという気持ちは理解できるのだが、命の恩人であるゆなを裏切ることなんて、仁に出来るわけないでしょ(怒

でも、いろいろあったけど、最後に伯父上の涙を見て、仁のことを実の子以上に想ってくれていたんだなと感じた。そして、仁もまた、志村のことを実の父親以上に想っていた。父子としての絆を築きながらも父子になれなかった。本作はそんな二人の姿を通じて、真の武士道とはなにか?を問われているような気がした。

●コトゥン・ハーン

モンゴル軍を率いるボス。

侵略するにあたって日本の文化を学び言葉を覚えたということで、とても流暢で貫禄のある日本語を喋ってくれる(笑)。だが、こいつに武士道も誉も通用しない。合理的で冷酷な人間だが、他のキャラクターが一癖も二癖もある人物ばかりなせいか、ハーンに関しては、むしろ王道なラスボスという感じがする(笑

どうでも良いが、よく見ると結構可愛い顔をしているような気がする。

●愛馬

旅の移動に欠かせない愛馬。今作では、白・黒・斑、そしてデラックスエディション版の場合は、その特典馬の中から1頭選べる。名前も、空、影、信(ノブ)の中から選ぶことになる(途中で変更はできない)。

RDR2の時は主人公のイメージに合わせて黒っぽい馬を好んで乗っていたが、今作では白に一目惚れしたので、白馬に信と名付けて可愛がっていた。しかし、物語の後半で仁は愛馬を失うことになる。仁を追手から逃がすため、信は多数の矢を受けながらも必死に走り続けたのだ(涙)。たかの死、そして愛馬の死。悲しいことが立て続けに起こり過ぎて、この辺のシナリオは本当に辛かった。一番辛かった。

今作の馬は人懐っこくて本当に可愛かったから、信の喪失感は凄かった。しかも同胞に殺されたのが余計に辛い。あの時、馬を狙えって言ったやつ、絶対に許さないからな!(泣

愛馬は固定だが、敵が乗っていた馬や村に居る馬に乗ることも可能なので、白馬を見かけては信を思い出す日々…。暫くの間は繋ぎとして普通の茶色い馬に乗ることになるが、物語を進めると、ゆなが二代目として新しい馬を連れてきてくれる。自分は通常版を買っていたので、初代で選んだ色・名前以外のものから選ぶことになった。

二代目は斑の馬で空と名付けた。黒馬とかなり悩んだが…仁には斑の方が似合ってるような気がした。あと名前も風、空、影の中なら「空」が一番、呼んだ時の響が良いなと思ったので、これにした。

冷静に考えたら、仁はゲーム開始早々に爆撃で愛馬を一度失っている。だから仁にとっては三代目の馬になるのかな。後から赤い馬具を手にいれた時、信ならとても似合っていただろうと思い少し寂しくなったが、斑の空もずっと乗って居たら愛着が湧いてきた。

エンディング後、馬具を見てかつての愛馬・信を思い出してくれたのは良かった。温泉に入ってた時も、亡くした愛馬を想うシーンがあったし、狐もモフモフできるし、こういう細かい描写からも、仁は動物を大切にする人物だというのが伝わってくる。

●最後に・・・

対馬を救った後は自由に行動できるので、まずは友のお墓へ。
RDR2でも同じことしてたなぁと思いつつ、全て終わったと報告しに行った。

大型アップデートでプレイ時間が表示されるようになったので見てみたら、クリア(トロコン含)まで72時間でした。このデータを引き継いで二周目プレイも出来るようになったので、時間があればまたやってみようかなぁと思います。

「Ghost of Tsushima」

これもまた心に残る、素晴らしい侍ゲームでした。
買って良かったです。ありがとうございました。

©2020 Sony Interactive Entertainment LLC.

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